イスラエルで首相に抗議の大規模デモとストライキ 司法改革めぐる国防相解任に反発
https://www.bbc.com/japanese/65085718
イスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相が進める司法改革に反対した国防相が解任されたのを受け、
国内各地で週末から27日にかけて、数万人規模の大規模な抗議が相次いだ。
27日には国内最大労組によるゼネストの呼びかけを受け、テルアヴィヴの空港で航空機の離陸が中止された。
ネタニヤフ首相は26日、ヨアヴ・ガラント国防相を解任。
ギャラント氏は前日、ネタニヤフ政権が裁判官の任命権強化などを目指して進める司法改革について、国内の対立悪化を懸念し、国会審議の中断を求めていた。
エルサレムではその後、ネタニヤフ首相宅の周りにデモ隊が集まり、政府に抗議。
警察や兵士はデモ隊に放水車を使った。
27日早朝には、イスラエルのイザーク・ヘルツォグ大統領がツイッターで、司法改革停止を政府に呼びかけた。
「イスラエル国民の団結のため、責任ある行動のため、(司法改革案の)立法府審議をただちに停止するよう」大統領は求め、「イスラエル国民全員が見ている」と強調した。
米政府は深い懸念を表明し、イスラエル政府に譲歩を求めた。
最大労組・イスラエル労働総同盟のアルノン・バル=ダヴィド議長は27日朝から、政府に抗議してゼネストを呼びかけた。
空港作業員の組合がいち早くこれに呼応したため、テルアヴィヴのベン・グリオン空港からのフライト出発がただちに中止された。
国内報道によると、イスラエル医師会や地方自治体連盟なども、ゼネストに参加する方針という。
ネタニヤフ政権が法制化を進める司法改革案は、国内で激しい対立を生んできた。
政府は、裁判官任命の委員会に対する政府の権限を強化するほか、職務不適格とされる政府幹部の解任を裁判所が命じる手続きを困難にしようとしている。
後者の措置は特に、汚職罪で今なお公判中のネタニヤフ首相のための「改革」だとして、イスラエル国内で強い反発を呼んでいる。
これに対してネタニヤフ首相は、政府が進める改革は裁判所による権限乱用を防ぐためのもので、昨年11月の総選挙で民意の支持を得ていると反論している。
イスラエル国防軍に政府批判の動き
解任されたガラント国防相はイスラエル国防軍の元南部軍司令官。
ネタニヤフ首相が推進する司法改革について、予備役の不満を受け止め続けていた。
3月初めにはイスラエル空軍の精鋭部隊で、戦闘機パイロットたちが政府への抗議として訓練をボイコットする異例の事態があった。
のちにこのパイロットたちは司令官と協議したうえで、訓練参加に合意した。
ガラント国防相は25日にテレビで政府の司法改革に抗議し、国防軍の多くが政府の動きに怒り、落胆していると述べた。
国防相のこの発言を受けて、ネタニヤフ首相はもはやガラント氏を国防相として信用できないと解任を発表した。
首相は問題の法案を今週中に議会通過させたい考え。
ガラント氏とネタニヤフ氏は共にリクード党に所属。党内からガラント氏を支持する声も出ているが、党内右派は同氏の解任を支持している。
更迭後にガラント氏はツイッターで、「イスラエル国家の安全保障はこれまでも今後も常に、私の終生の使命だ」と書いた。