「夜、コンビニでバイトしている」刀匠は無給が当たり前…師から弟子に受け継がれる伝統職人の“意外な現状”(文春オンライン)
https://news.yahoo.co.jp/articles/07205dec18b297a765a488aa2bf5ae5836c0663a

落語家も師弟制度で成り立っている。俺も昭和62年、三遊亭圓丈に入門した。それからさまざまな師弟関係を見てきたが、この本で描かれるそれは全く別物である。想像していた伝統職人の世界が今こんなに違うのかと驚いた。たとえば刀匠。それこそ一子相伝の厳しい世界だと思っていた。だから弟子入りしたきっかけが、「『アド街ック天国』を見てかっこいいな、と思ったから」だなんて、おいおい、日本刀なめてんのかよ、と言いたくなる。もっとも、かくいう俺も落語に興味がなく、偶然テレビで見た圓丈の弟子になった口で、偉そうなことは言えない。

きっかけは何であれ、縁があってその仕事に導かれる。だから辛い修業にも耐えられる。刀匠に入門したお弟子さんがさらっと言う。

「刀の世界では(無給は)当たり前。夜、コンビニでバイトしているので、大丈夫です」

え、お金もらえないの? それを当たり前と言えるのが凄い。文化財修理装潢師(そうこうし)のお弟子さんは、紙の表面の1ミリ以下の黒い繊維をピンセットでつまみ除去する仕事を、朝から夕方まで黙々とやり遂げる。俺、絶対無理です。彼に仕事の醍醐味はと聞くと、

「前の時代の人たちが大切に伝えてくれた作品を、次の世代に、でしゃばらずに手渡す行為だということ、ですね」

俺が、俺が、と売れたい落語家に聞かせたいよ。

(後略