自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション
■中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」
台湾有事をめぐる緊張が高まっている。中国の習近平国家主席は台湾統一への意欲を明言しており、武力攻撃の現実味は増している。
【写真】F-35A(出典=航空自衛隊ホームページ)
仮に有事に発展した場合、台湾は中国の人民解放軍に対抗し、主権を維持することが可能なのだろうか。また、近隣国である日本にどのような影響が及び得るのだろうか。
日本のシンクタンクである笹川平和財団が実施し、日経アジアが報じた戦闘シミュレーションによると、仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測が示された。米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した机上戦闘シミュレーションも、同様の傾向を示した。
ただし、どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果が出た。
その内容は海外のニュースメディアにも報じられるところとなった。米軍事分析サイトのソフリプは、CSISの分析を報じ、中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」と述べている。
一方で同記事は、「言うまでもなく、中国は数十発の中距離および中距離・準中距離弾道ミサイルを保有しており、その気になれば日本を簡単に攻撃することができる」とも述べ、改めて中国の脅威を警告している。
■日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊員2500人が死傷する
笹川平和財団は1月下旬、4日間を投じ、中国が台湾侵攻を行ったと仮定した机上の戦闘シミュレーションを実施した。元自衛官や日米の学者・研究者など、識者約30名が参加した。シナリオでは2026年、中国が水陸両軍を投じ、台湾に武力攻撃を仕掛けた状況を想定している。
日経アジアは2月下旬、この内容を詳しく報じた。台湾占領という中国の目論見(もくろみ)を阻止することは可能であるとの結論だ。同時に、日米は「軍事的な人員と装備に大きな犠牲が伴う」とも報じられている。
財団によるシミュレーションでは、日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達するとの結果が得られたという。一方でアメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがあるとの結果が示された。
シミュレーションでは核兵器の使用は想定していない。また、米が軍事的関与を強めているフィリピンを含め、ASEAN諸国の対応は検証の対象外とした。
■日本は米軍の行動に巻き込まれる
シミュレーションでは中国軍が侵略にあたり司令部を設置するとし、これにアメリカ軍が直ちに対応する状況を描いた。米軍は原子力空母を中核とする空母打撃群およびステルス戦闘機を直ちに出撃させ、台湾周辺に配備する展開が想定された。
これに伴い、軍事基地や民間空港の利用を米軍に認めている日本は、米軍の行動に巻き込まれる展開になるとシミュレーションは想定している。中国は日本の米軍基地に対してミサイル攻撃を実施し、これを受けて日本の首相は国家非常事態を宣言する流れとなる。
国家に存続の危機が生じたと判断されることで、日本はアメリカ軍に対し、沖縄や九州の自衛隊基地や民間空港の使用を許可する展開になるとの想定だ。
さらに日本側は、海上自衛隊の軍艦および航空自衛隊のF-35戦闘機を出撃させ、中国からの攻撃に対抗措置を講じる。シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている。
ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0bed762033c3d96181e56c0fdb2a839f26490ca5?page=1