https://www.tokyo-np.co.jp/article/230500

 旧ソ連諸国の高麗人 19世紀に朝鮮半島の農民らがロシア沿海州に移住したが、ソ連最高指導者スターリンは日本のスパイとなると警戒し、1937年に17万人を中央アジアに強制移住させた。今も旧ソ連諸国などに50万人が暮らす。

ロシアが侵攻したウクライナからの避難民約3000人が韓国に滞在している。大半が朝鮮半島にルーツを持つ「高麗人」で、韓国の高麗人コミュニティーが支援してきたが、政府の動きは鈍い。避難民の多くが韓国語を話せず、在留資格が不安定で職探しも難しく、苦境に立たされている。 (ソウル・相坂穣、写真も)

◆先祖は強制移住で苦しんだ
 「プーチン(大統領)が領土を拡大しようとした戦争で故郷を追われた」
 韓国南西部の光州市でムン・エレナさん(23)は怒りを隠さない。昨年3月、姉(29)やおい(3つ)ら親族9人とともにウクライナ南部オデッサを脱出。2カ月余り隣国モルドバやルーマニアの教会などで寝泊まりし、最後は高麗人コミュニティーを頼りに韓国に渡った。

 2000年代以降、旧ソ連から韓国に移住する高麗人が増え、光州市には約7000人が暮らす。支援の中心であるウズベキスタン出身のシン・ジョヤさん(66)は「私たちは強制移住で苦しんだ先祖を持つ。国を超えて助けよう」と訴える。1月末までに16億ウォン(約1億7000万円)の寄付が集まり、ウクライナ周辺から韓国に向かう高麗人875人の航空券を援助した。

朝鮮半島出身というルーツを重視する高麗人には1991年のソ連崩壊後、特定の国籍を選択しなかった人も多い。韓国政府などによると、韓国にいるウクライナ避難民約3000人のうち1割近くが無国籍とみられる。

高麗人文化センターの金映淑キムヨンスクセンター長は「避難民は経済基盤が弱く、家賃や医療保険を払えない懸念がある。政府は支援策を急ぐべきだ」と訴える。

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