日本では発売されなかったCD-i版『ゼルダの伝説』スピンオフの3作が、2023年後半にNintendo Switch用に「リマスター版」として登場すると、海外ゲームメディアが主張しています。
CD-iプレイヤーとは、かつてオランダのフィリップス社が投入したCDドライブ搭載のマルチメディア機のこと。日本では主に「ソニー製PlayStation誕生のきっかけとなった」という文脈で、ごく一部にのみ知られている存在です。
もともと任天堂がソニーと提携してスーパーファミコン用CD-ROMアダプタ「PlayStation」を共同開発。ところが任天堂が翻意してフィリップスのCD-iに協力すると発表し、任天堂版プレイステーションはご破算になり、ソニー側で主導していた久夛良木健氏は初代プレステ推進の原動力とした……という流れです。
そうした任天堂とフィリップスの契約に基づき、90年代にゼルダを冠したCD-iタイトルが発売されました。1993年に『Zelda: the Wand of Gamelon』(以下「ギャメロンの杖」)、『Link: the Faces of Evil』(以下「悪魔の顔」)が同時発売、1994年に『Zelda's Adventure』(以下「ゼルダ姫の冒険」)という3本です。
フィリップスが任天堂の許諾のもとで開発した正規品ですが、開発はフィリップスの下請けが行い、発売もフィリップスから。つまり任天堂はどの段階にも一切関わっておらず、ノータッチと思われます。
そのためか「任天堂版では無言のリンクがペラペラしゃべる」「キャラクターの作風が原典からかけ離れている(任天堂版もキャラクターデザインの幅はありますが)」「非常に操作性が悪い」という諸要素が折り重なり、海外ファンからもおおむね低評価が下されていました。
また国内メディアでも、任天堂オフィシャルの『ゼルダの伝説 ハイラル百科』ほかで言及されることは滅多になく、長らく黒歴史として扱われていた経緯があります。
さて海外ゲームメディアNintendo Lifeの「任天堂に近い」匿名情報筋によれば、『ゼルダの伝説』総合プロデューサーの青沼英二氏は、3部作をゼルダの正典とは考えていないものの「任天堂とゼルダの伝説の歴史の重要な一部であり、プレイヤーがゼルダ姫を操作できる初のゲームとして、現代のシステムで遊ぶ価値がある」と語っているそうです。
また3作とも、「洗練されたビジュアル」とアレンジされたオーケストラのサウンドトラックが使われるとのこと。オリジナルは3作とも洗練されないビジュアルが特徴的でしたが、プレイする上で大きな抵抗だったものが取り除かれそうです。
実際「ギャメロンの杖」と「ゼルダ姫の冒険」は、ゼルダ姫がとらわれの身でも霊体でもなく、初めて実体ある姿で操作できるようになった作品です。一応、後年の『ゼルダ無双』や『大乱闘スマッシュブラザーズX』(シーク)でプレイアブルとなっており、唯二というわけではありません。
「悪魔の顔」と「ギャメロンの杖」は米Animation Magicが開発したもの。前者はリンク、後者はゼルダ姫が主人公で、どちらも「リンクの冒険」のような横スクロール・アドベンチャーとなっています。両方ともシステムが全く同じなのは、おそらく同時開発ゆえに工数を減らすためでしょう。
そして3作目の「ゼルダ姫の冒険」は、米Viridis Corporationが開発。こちらは見下ろし画面で初代『ゼルダの伝説』風で、ゼルダ姫がリンクをガノンから救うために冒険を繰り広げます。かなりの正統派になりそうなものですが、実写ムービーを使っているため最も異質に見えます。
https://youtu.be/iPn3LIe2e3w
https://youtu.be/M52zKfu-cHk
https://youtu.be/6Yq79JeK_UE
これら3タイトルは、夏の「Nintendo Direct」で隠し球として発表される予定とのこと。ゲームの歴史を保存する上では、悪評を受けた過去作であれ風化させずにリマスターとして新たな命を吹き込むのは意義あること。が、歴史を丸ごとアーカイブするという意味で、リマスター版のほかCD-i版も修正せずに収録してほしいものです。
https://www.techno-edge.net/article/2023/04/02/1100.html