米紙の疑問「日本では、なぜイチゴが冬にとれるのか?」 本当は「春の果物」なのに…
かつては日本でも、イチゴといえば春から初夏に旬を迎える果物だった。ところが、クリスマスでも当然のようにイチゴの乗ったケーキが食べられるようになったのと引き換えに、日本のイチゴ栽培は、他の果物の比にならないほど環境負荷が大きいものになってしまった。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、日本のイチゴ農家の葛藤と、問題解決に向けた取り組みを取材した。
「私たちは何をやっているんだろう?」
イチゴのショートケーキ、イチゴ大福、ストロベリー・ア・ラモード……。
これらは夏のお楽しみのように思われるかもしれない。だが日本では、イチゴの収穫のピークは冬に訪れる。文句なしの見た目のイチゴが食べられるのは、この肌寒い季節なのだ。なかでも出来の良いものは、特別な贈り物として、一粒数万円で売られている。
日本のイチゴ栽培は、環境への負荷が大きい。冬に春のような環境を作り出そうと、農家は灯油を大量に消費する大きな暖房器具で巨大な温室を暖め、この季節外れの味覚を栽培している。
「冬にイチゴを食べるのが当たり前だと思う人が多くなってきました」と話すのは、大阪府箕面市でイチゴ農園を営む吉村聡子だ。
吉村は昨シーズンまで、氷点下になることもある冬の間ずっと、灯油式の暖房で温室を暖めていた。だが、暖房のタンクに灯油を入れ続けるうちに、「私たちは何をやっているんだろう?」と考えるようになったという。
イチゴのシーズンが前倒しされた理由
もちろん、野菜や果物の温室栽培は世界中でおこなわれている。しかし、日本のイチゴ栽培では極端にそれが押し進められた結果、ほとんどの農家が本来のシーズンである暖かい時期に栽培するのをやめてしまったのだ。日本は現在、夏期のイチゴの供給をほとんど輸入に頼っている。
現代人が常に新鮮な食材を求めた結果、驚くべき量のエネルギーを消費せざるを得なくなり、地球温暖化を悪化させているが、これはまさにその一例だ。イチゴやトマト、キュウリなどの農産物が、寒い時期でも手に入るようになった代償とも言える。
数十年前まで、日本のイチゴの旬は春から初夏だった。だが、日本の市場は長年、マグロも米もお茶も、そのシーズンの最初に獲れたもの、いわゆる「初物」に高値をつけてきた。初物には、通常の何倍もの値段がつく。マスコミに熱狂的に報道されることもある。
日本の消費経済が軌道に乗ると、初物レースはイチゴにも波及した。農家が競うようにイチゴの出荷時期を早め出したのだ。
「イチゴの旬は4月から3月、2月、1月と早まり、ついにはクリスマスの時期にも出荷されるようになりました」と、東京を拠点にイチゴ栽培のコンサルティングをおこなう「イチゴテック」の社長、宮崎大輔は言う。
いまやイチゴは、日本のクリスマスに欠かせない食べ物のひとつとなり、12月に全国で販売されるクリスマスケーキを彩っている。なかには初物のイチゴを11月に出荷する農家もあると、宮崎は言う。
(以下ソースに続く)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3eed19835f97c2fc3992339105b96c694dec1fd5