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TOTO、半導体関連の利益率3割超え 工場改革で効率3倍
シリコンアイランド
TOTOが半導体関連事業の収益力を飛躍的に高めている。手掛けているのは半導体製造装置向けのセラミック製品で、2022年3月期は事業別の売上高営業利益率が31%と前の期の9%から大幅に向上、23年3月期も同38%と一段の成長を見込む。トイレなど主力の住宅設備事業が国内外とも伸び悩むなか、半導体関連が収益の柱に育っている。
「20年10月に大分県中津市で新棟を稼働させるのを機に、生産工程をゼロから見直した成果だ」。TOTOのセラミック事業部の桜井隆好・生産技術部長は22年3月期の連結決算をこう解説する。同事業の営業利益は前の期比5.1倍の93億円に急拡大。原動力はデジタル技術を活用した「スマート化」による工場改革で、生産効率が3倍に高まったことだ。
TOTOは1984年、半導体関連事業に参入した。シリコンウエハーを電気的な力で固定する「静電チャック」などを製造装置メーカーに供給する。中津市には以前から工場があったが、新棟では「工程自動化」「人工知能（AI）」「データ活用」の3本柱を本格的に導入した。
工程自動化は、セラミックを加工する機械に工具を据え付けたり、決められた位置に部材が置かれているかを確認したりする作業を機械化。AIは、カメラによる外観検査時に不良品を判定する。データ活用は、不良品が発生したときの加工データを多角的に分析することで原因究明と再発防止に役立てる。
いずれも従来は工場の作業者が人手で進めていたが、人間なのでミスは避けられない。「スマート化」以前は、新製品投入時などに不良品率が高止まりし、その穴を埋めるための追加作業を繰り返し迫られて現場が混乱。赤字に転落する年もあった。
桜井氏は「材料を投入してから製品を出荷するまでのリードタイムは現在は約50日。新棟稼働前は約150日だった」と打ち明ける。一般にリードタイムの短縮は原材料や仕掛かり品の在庫削減、製品をつくらない待機時間の短縮など、生産性の向上に直結する。
生産効率が高まったことで国内の住設事業の売上高営業利益率（22年3月期、5%）を大幅に上回る収益力を確保した。半導体市場の成長を追い風に22年3月期の静電チャックの出荷量が17年3月期の約3倍に増えた一方、工場の作業員は約700人と、同約1.4倍に抑えたことも寄与している。
セラミック事業の成長について、TOTOの清田徳明社長は「国内の住設事業、海外の同事業に続く、3本目の収益柱を確立することができた」と強調する。23年3月期は中国のトイレや温水洗浄便座「ウォシュレット」の市場が成長の踊り場に入り、同国住設事業の営業利益が80億円と前の期からほぼ半減する見通し。セラミックが全社の業績を支える構図が鮮明だ。
TOTOの静電チャックは、耐摩耗性に優れ、製造装置のなかで半導体の不良品発生の原因となる微細なチリやホコリを生みにくいのが強み。24年3月期は長所を伸ばした次世代品の投入を検討する。
ただ、足元では半導体メモリーの市況が悪化しており、23年1〜3月に限れば生産調整の影響でセラミック事業の利益率は18%に低下する見込み。今期も前半は同様の調整が続く懸念があるが、清田社長は「半導体市場は中長期でみれば成長が確実。足元の調整が終われば、即座に増産できるよう先行投資を含め準備を進める」と話す。
政府も半導体産業の振興に力を入れている。経済産業省は3日、国内で生産した半導体関連の売上高を30年に15兆円にする目標を発表。21年に策定した目標から2兆円引き上げた。国内半導体産業を再び強くするには、生産の拡大とともに収益性をどう高めていくかがカギになる。
