怖いロシア」の先入観なしに

上坂 すみれ 声優
 声優の中でロシア語は希少価値、ロシア人役をいただくなど武器のひとつになっていますが、このロシア押しとミリタリー好き、ロリータ・ファッションもあわせて、個性的だと言われます。ただ私は、自分が心から好きなものを素直にモチーフにしているだけです。

 ロシアは、一言でいえば一筋縄でいかない国。歴史は波乱に満ちていて、暗いのかと思うと能天気な明るい歌があったり、重厚な文学の中にとんでもない発想のSFやシュールな詩があったり、いつも、知らない面を見せてくれるんですよね。

 私は、とくにソ連時代が好きです。帝政がずっと続いていたところに、レーニンたちが完全に人工的な統治システムを築き上げて、それが70年以上も続いた。一方では莫大な軍事費を使い、宇宙開発を進めていながら、市民は食糧を求めてスーパーに行列をつくる、そんな不条理な社会が、不謹慎と言われるかもしれませんが、私にはファンタジックで刺激的に感じられるんです。

 私が生まれたのは、ちょうどソ連が崩壊した年。現実のソ連を知らないからこその、考え方なのでしょうね。昔の航空雑誌などを見ると、ソ連の戦闘機についてはその恐ろしさしか書いていない。そういうイメージだったんだなと思います。

 いまでもロシア関連の報道というと、おっかないニュースばかり。でも、その先入観で、ロシアに暮らす人たちまで恐ろしいとは思ってほしくないんです。

https://yab.yomiuri.co.jp/adv/sophia/sophian/sophi_14.html