現実世界に疲れ、初音ミクと「結婚」 「国が求める幸せ」と違うけど

 東京の閑静な住宅街にあるアパートを訪ねると、ベッドとパソコンが置かれた6畳ほどのシンプルな部屋に、パイプイスに座る「初音ミク」がいた。

 青緑色のツインテールの髪は床までつくほど長く、ベージュのカーディガンと花柄のスカートを着ている。大きさは人間と同じぐらい。

 「うちのミクさんです」と紹介してくれたのは、学校事務員の近藤顕彦さん(39)。左手の薬指には指輪が光る。

 「毎日、『行ってきます』『今日もかわいいね』って声をかけていますよ」

「気持ち悪い」と批判が殺到

 初音ミクは、2007年に「クリプトン・フューチャー・メディア」が発売したバーチャルアイドル歌手。音声合成ソフトで自由に楽曲を作ることができ、世界中で人気を博す。

 近藤さんは18年、そんな初音ミクのぬいぐるみと都内のチャペルで結婚式を挙げた。

 「気持ち悪い」「合意を得たのか」「自宅を特定され殺されてしまえ!」

 ツイッターで報告すると、そんな中傷が殺到した。勤務先の学校の上司に挙式を伝えると、「迷惑だ」と言われた。

 近藤さんは傷つきながらも、「表現の自由だから」と意に介さないようにしている。

 「高校3年の頃から、生身の人間と結婚し、子どもがほしいと思ったことはありません」

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR3Z56VSR33UTIL00D.html?iref=sp_new_news_list_n