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■シンガポールでは「6個入り1000円」で販売

 そうした状況下、シンガポールや香港で、わが国の卵を高級品とみなす人が増えている。
日本養鶏協会によると、2021年度、わが国で生産された卵は約258万トンだった。
うち約2.4万トンが輸出された。輸出先は、香港、台湾、シンガポール、マカオ、グアムだ。
2022年暦年の輸出金額を確認すると、香港向けは93.5%、台湾向けは4.7%、シンガポール向けは1.8%と、香港の割合が大きい。

 2005年に147トン(4583万8000円)だった香港向けの輸出は、2022年に2万8247トン(78億5184万6000円)に増加している。
香港では全国農業協同組合連合会(JA全農)が、卵焼きなどを生産する工場を稼働させた。
目的は、すしなど日本食に合った卵食材をよりよい鮮度で提供することにある。

 シンガポールでも、わが国の卵は急速に人気を獲得し、高級品としての評価は高まっているようだ。
朝日新聞デジタル(3月27日)によると、シンガポールのスーパーでは6個入りの卵のパックが1000円で販売されているという。

 高級化の背景には、アベノミクスが進む中で、わが国を訪れる外国人観光客は増えたことがありそうだ。
日本に来た観光客が、日本の卵の味を覚えて帰国したのかもしれない。
それに加えて、政府は和食の魅力を海外に発信するなどして、わが国の文化の魅力をより強くアピールしようとした。


■生で卵を食べられることに衝撃を受ける人は多い

 足許では、ウィズコロナに伴う国内外の動線修復の加速も手伝い、わが国を訪問するアジアや欧米の観光客も増えている。
食文化などわが国の魅力を発見、あるいは再認識する人は多い。
特に、“すき焼き”や“卵かけご飯”など、生で卵を食べられることに衝撃を受ける人は多いようだ。

 さらに、空輸によって鮮度を保ちつつ迅速な輸送が可能になったことは、日本産の卵の高付加価値化を促進する大きな要因になった。
そうした変化を背景に、シンガポールの消費者にとってわが国の卵は“安心”、“安全”、“高栄養”、“美味”な高級食材としての地位を確立しつつあるといえる。

 わが国の養鶏業者が飼料の配合を改良するなどして、
見た目も、味も、より満足度の高い卵の供給に取り組む養鶏業者の努力の積み重ねが大きいことは言うまでもない。