https://www.sankei.com/article/20230412-7JCRTZDZM5PPTFXXAXN4JHF7SM/

沖縄県の宮古島付近で10人が搭乗した陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH60JA」が消息を絶った事故で、事故機には緊急着水時に使用する「緊急用フロート」が装備されていなかったことが12日、陸自への取材で分かった。

航空法施行規則は水上を30分以上または185キロ以上飛行するヘリに装備を義務付けているが、陸自関係者は「事故機は海上での飛行を主としておらず、安全に救命し得る最低限の装備で飛行していた」としている。

緊急用フロートは機体下部に装備し、緊急着水が想定されるときに空気で膨らませることで機体を浮かす装置。
機内から脱出する時間が確保され、搭乗員の救命に役立つとされる。

陸自関係者によると、事故機は4日に高遊原(たかゆうばる)分屯地(熊本県)を離陸し、洋上を航空自衛隊那覇基地まで移動。
6日に航空自衛隊宮古島分屯基地へ移り、午後3時46分、地形を視察するため坂本雄一第8師団長(55)らを乗せて同基地を離陸していた。
離島が多く海上を飛ぶ機会が多い沖縄県に駐屯する陸自の同型機には緊急用フロートを装備していたが、熊本県の第8師団に所属する事故機には装備していなかった。

陸自は「離島の上空を経由するなど緊急着陸が可能な陸から離れた洋上での長時間の飛行は行っていないため、法令上も緊急用フロートの装備が義務とはならなかった」と説明した。

緊急用フロートは海上自衛隊の哨戒ヘリのほか、海上保安庁の全55機のヘリに装備。平成20年に宮古島近海で不時着水したケースでは、緊急用フロートを展開し人命が救われている。