インフラ老朽化の現状と対策

■ インフラ老朽化の現状
日本のインフラの多くは高度成長期に集中して建設され、1970年代にはGDPの10%に相当する公共投資が行われた。その当時に建設されたインフラが老朽化し、現在、深刻な問題となっている。

一定の確率で起こる地震や自然災害とは異なり、インフラの老朽化は進行するといつか必ず崩落や陥没、崩壊等の事故を発生させてしまう。いわば「緩やかな災害」である。

地震や自然災害への対策も重要だが、安全な国土を維持するためにはインフラの更新が必要になる。

ところが、現状は厳しい。例えば、70年代には年間約1万本の橋が架けられた。コンクリート橋の耐用年数を踏まえると、2030年代にはこれらを架け替える必要がある。

しかし、財政上の制約から近年の実績は数百本にとどまっており、更新が追いついていない。同様の状況が学校や公民館等の施設、上下水道等のインフラでも起こっている。

■ 解決策と政策転換
今後インフラ更新投資の需要はますます増大するものの、公的負債が増大するなか、必要な予算を確保することは難しい。近年は補正予算等で工面しているが、これは将来の財政崩壊につながりかねない。

増税も困難である。そのため、更新に「かける金額を減らす」方向へと政策を転換することが最も現実的である。

具体的に、公共施設については、機能を維持しつつ他の自治体等との集約化(統廃合)や広域化(共同設置)、

民営化・共用化等によって量の削減を図ることで費用を抑えるべきである。例えば、学校のプールを廃止して民間のスポーツ施設で授業を実施する、

学校と公民館がそれぞれの図書館や体育館等を統合する、学校とケアハウス等を複合施設として設置する等の事例がある。

存在そのものに公益性があり、単純に量を削減することが難しい橋や道路などの土木インフラについては、先進技術を用いて点検箇所の絞り込みや劣化状況を予測する予防保全、

影響力の少ないところから公共サービスを撤退していくリスク・ベース・マネジメント(道路舗装頻度の削減等)、保全業務の包括的民間業務委託等、量を維持しつつも費用を削減するための取り組みが必要である。


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