https://mainichi.jp/articles/20230415/k00/00m/040/108000c

海を挟んだ「出稼ぎ」の流れは逆流しつつあるかのようだ。
アジアや南米などから大勢の人が日本に働きにくるのは少し前まで当たり前の光景だった。
しかし今や、仕事を求めて日本から海外に向かう若者が増えている。
経済評論家の加谷珪一さんは、その理由を「日本の賃金が低いからだ」としたうえで、
この状況を放置すれば日本経済や社会の根幹に関わる深刻な事態が起こる可能性を指摘する。

今や韓国より安い平均賃金

 ――海外に出稼ぎにいく若者は実際に増えているのでしょうか。

 ◆まだ統計上、大きな数字は出ていませんが、海外で働いた方がいいと考える若者は間違いなく、着実に増えています。
このままの状態が続けば、かなりの数の人が海を越えて外国で働いたり、移住したりするでしょう。

 今の日本の大きな問題は、少子高齢化や人口減少で、日本の経済を支える「生産年齢人口」が減っていることです。
若者の出稼ぎや移住の増加は、生産年齢人口の減少に拍車をかける可能性があり、いずれ日本の産業界の首をじわじわ絞めることになると思います。

 ――出稼ぎや移住が増えている背景には何があるのでしょう。

 ◆まず、日本の賃金が低いからです。最近は円安が加わり、海外の主要国との差は拡大しています。
経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査では、日本の平均賃金は約424万円で、既に韓国(約462万円)を下回っています。
韓国は高所得者と低所得者の差が大きいという人もいますが、韓国の賃金は全体的に底上げされています。
最近聞いた話では、一般企業の事務職を解雇された人が、単純な肉体労働の仕事に再就職したところ、年収は約400万円だといいます。
日本で同じような形で再就職した場合と比べると、考えられないような好待遇です。

さらに、若者が海外に向かう背景には、低賃金だけでなく、働き方の問題もかなり重大な要素になっていると思います。