◆衝突はなぜ起きた?正規軍と傭兵部隊の緊張 背後にはロシアも

堀)

この状況は「クーデター」なのでしょうか?

坂根)

非常に複雑な状況が発生していまして、2021年10月25日にいわゆるクーデターが発生しまして、それまで行っていた暫定民主政権の民主派のグループが逮捕されたり、解任されたりという事案が発生しました。

その時は国軍もRSFも共に軍政側だったのですが、それから1年以上経ちまして、昨年、2022年の12月に政府を元に戻そうということで「政治枠組み合意」、こちらの言葉では「フレームワークアグリーメント」というのができました。

まず、原則論として元に戻すという枠組みに合意ができました。その後、ファイナルアグリーメント(最終政治合意)を4月1日に、それを踏まえ暫定民主政権を樹立するというプロセスになったんです。タイミングとしては、ちょうどまさに大詰めのところでした。

その大詰めになる最後のポイントが「セキュリティーセクターリフォーム」、つまり軍事部門改革の話だったんです。一番のポイントが軍とRSFの統合問題でした。

軍は2年以内に統合しようと言ってるのに対して、RSFは10年はかかると言っていて、なかなかその折り合いがあってつかなかったんですね。で、それがトリガーになっていまして、軍とRSFの間で、統合前までにどちらが優位な立場を築くのかせめぎあいがあったんです。それが、4月13日、木曜日の北部のメロウェでの攻防です。

スーダンの空軍基地を100台以上の軍事車両でRSFが押さえにかかりました。RSF側はそもそも空軍を持ってないので、そこを押さえようとしたということと、もう一つ。

RSF側の言い方としては、軍がエジプトと調整し、エジプト空軍を派遣して、RSFを狙おうとしていたので、それに対して先制攻撃を行なったと。RSFが軍の制空権を抑え軍用機を飛ばせないようにとしたようです。

軍としてはこの暫定政権移行プロセスの中で、軍は政治プロセスから撤退すると言ってるものの、その中で軍の力が弱まる反面、RSFの力が強くなって治安維持構造が逆転したり、変なことになることを恐れていたので、全体としては政治合意には賛成と言ってるんですが、RSFとの関係をどうするかというところが、ひとつの大きな課題になっていたと思われます。
◆資金源は戦利品として得た「金」採掘権 その影響力は各国に

堀)

まさに2019年の市民革命の時にも「治安維持部隊」として市民の虐殺行為を行ったりですとか、遡るとダルフール紛争でもかなり非人道的な攻撃をする部隊としても、世界で注目を集めました、そういう部隊が新しい政府作りをする、自分たちから主導権を引き渡すようなことをするとはなかなか思えないなと思って注視してきました。RSFは、実際、かなりいろいろなところに資金源も持っているということも聞いたことがあるんですけど、坂根さんからご覧になっていて、このRSFというのはどういう組織、どういう人たちだというふうに見ていらっしゃいますか。

(※下記映像は2019年市民革命を当時取材した際のルポ。ここから民主政権への移行プロセスが始まった)

坂根)

本当に不思議というか、とても特徴のある組織だと思います。堀さん言われたように、バシール政権時代は「ジャンジャウィード」という一つの武装グループでして、この武装グループがダルフール紛争の時に虐殺行為をしたと言われています。

このジャンジャウィードは、バシール政権時代に「ダルフール方面は任せてくれ」と言って、バシールの手先となってダルフール紛争を買って出たところがありますので、バシールに重宝されて、それで首都まで上がってきたグループです。

そのときに「ジャンジャウィード」から名称を変えて「ラピッドサポートフォース(即応支援部隊)」に。おそらく考えてみると、バシールを守るためにあらゆること即応して対応する、これがRSFです。

このRSFと軍の関係というのは非常に複雑です。正規軍である「スーダン国軍」の中に幾つかある諜報機関の一部としてRSFが位置づけられてるものの、RSFは国防軍とはまだ一緒ではないし、また特殊な動き方をするというそういう複雑な構造を持ってるというのが成り立ちの部分としてあります。

通称「ヘメティ」と呼ばれていますが、モハンマド・ハムダン・ダガロという人物がトップでして、へメティの個人的なパフォーマンスで動いているところがあります。

https://news.yahoo.co.jp/byline/horijun/20230416-00345811