酒瓶足りない 需要回復に追いつかず 静岡県内日本酒業界苦慮

 新型コロナウイルス下での全国的なガラス瓶メーカーの生産調整や一部工場の稼働停止を受け、静岡県内の日本酒関連業界が容器の酒瓶不足に悩まされている。
社会経済活動の正常化に伴い酒の需要が回復に向かう中、注文に応じきれない異例の事態も生じ、関係者は「春の行楽シーズンで反転攻勢を図ろうとしているだけに大打撃だ」と苦慮している。

 神沢川酒造場(静岡市清水区)では昨年冬、愛知県のガラス瓶メーカーが一部工場の操業を終了した影響で、商社から欠品が出るとの連絡が入った。
早期対応で欠品分を補えたため、計画した酒製品の全量を生産、出荷できているが、従来と異なる色の瓶を使って急場をしのいだ場面もあった。望月正隆社長は「消費者が違う商品と錯覚してしまう可能性もある」と懸念する。
瓶の価格は供給減で昨秋から1割以上上昇し、「光熱費や原料、人件費に加え、瓶まで高騰するとは」とため息をつく。

 酒販店も、国内の一部酒造場が生産を減らしたあおりを受ける。長島酒店(同市葵区)の長島隆博社長は「レストランから日本酒2ケースの注文があったが、在庫がないので1ケースに変更させてもらったこともあった」と打ち明ける。
ホテルや飲食店を顧客に持つ同店では、必要な酒商品の入荷の遅れや減少が続く。販売店として取れる対応策は「ほとんどない」といい、顧客に別の銘柄を提案しつつ、一般消費者に空き瓶の返却を呼びかける。

 <メモ>日本ガラスびん協会などによると、新型コロナウイルス下の需要減を背景に、2021年の国内主要瓶メーカーの一升瓶の出荷本数はコロナ前の19年比21・1%減の3892万本。
22年は4344万本と増加したものの、需要回復に供給が追いついていない。22年末の一部メーカーの生産減を受け、23年1、2月の累計出荷本数も前年同期比11・1%減にとどまる。

 一升瓶の回収率もインターネット通販での購入増などで、21年は71・3%と、02年比で15ポイント以上低下した。
同協会担当者は「人手不足などもあり、瓶メーカーが急きょ増産体制に転じるのは難しく、当面は逼迫(ひっぱく)した状況が続くだろう」とみる。

https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1225732.html