いつまで、どこまで税金で保護するのか

 こんな状態の捕鯨事業者に対して、日本政府は今年度も51億円の予算を組んでいる。2010年までは10億円に満たなかったのに、2011年に第三次補正予算(復興予算)で23億円を充てたのを皮切りに、2012年には復興予算や他の漁業向けの助成金に割り込ませるなどして国費での補塡(ほてん)が始まった。2018年には51億円規模に膨れ上がった。調査捕獲したクジラの肉を販売して、経費をまかなう仕組みが、破綻(はたん)したのだ。

 捕鯨事業者に対しては、商業捕鯨が始まった当時「いつまでも税金での保護はしない」と水産庁では表明し、共同船舶に対しては2021年度からは、返済を前提とする「基金」で年10億円を割り当てている。アイスランド産ナガス肉を輸入する経費も工面しなかった。だが、不振が続く沿岸捕鯨(基地式捕鯨)に対して同じことをすれば、たち行かなくなることは目に見えている。

 そして51億円のうち30億近くは、「(一財)日本鯨類研究所」に委託する調査費などになっている。調査捕鯨の実施主体になるべく組織された研究機関を、調査捕鯨がなくなってもなお存続させるために、鯨類の持続的な利用の確保に関する法律に基づいて「指定鯨類科学調査法人」に指定されたためだ。

 日本には別途、国立研究開発機構である水産教育・研究機構があり、国際水産資源研究所水産資源研究センターがあって、広域性資源部には鯨類グループがある。この機構全体の年間予算は、職員数1126人に対して年間238億円(2018年度当初予算)が投入されている。職員数27人の日本鯨類研究所が、いかに手厚く保護されているかがわかるだろう。

https://webronza.asahi.com/science/articles/2023041600001.html