https://news.yahoo.co.jp/articles/93e57f3e8c1ff0a34719f7608e625dba0c115b2c
なんと「外科医師」が絶滅危惧種になっていた…産婦人科・小児科を横目に一人負け、20年後には「地元で手術」が受けられないかもしれない
かつて「外科医」は花形の職業でした。しかし、ハードな3K(きつい・汚い・危険)労働が敬遠されたためか、近年は外科医を目指す若者が急激に減少しています。10年ぐらい前に、小児科医や産婦人科医の不足が「医療崩壊」を招くといわれましたが、医学界と行政が対策に取り組んだ結果、志望者数は増加に転じています。一方、外科医の不人気は相変わらずで、この世界で「独り負け」しています。こうした状況が続けば、早晩、日本に「必要な時に手術が受けられない」時代が訪れるかもしれません。まるで新型コロナ極期の頃のように・・・・・・
天才外科医ブラック・ジャック。あくまで「マンガの世界のヒーロー」なのに、大学浪人中の私の心にグサリと刺さりました。そして時が経ち、私自身がメスを使うようになった今でも、いや今こそ、そのリアリティーに驚かされます。
偶然にも最近、漫画家の浦沢直樹さんが『ブラック・ジャック』を語るTV番組を見ました。
その中の古いインタビューで手塚治虫さんが語っていた、「終戦後の『ああ、生き残った！ 』という感動、そういう生への執着が作品の背景にある」という事実。「生きることへの執着」――しかも患者さんだけでなく外科医の「執着」が原稿に刻まれていることが、「あり得ない」はずのストーリーに真実味を持たせ、バッドエンドにも希望を感じさせているだと気付かされました。
今、日本の手術を支えている、いろいろな意味で「脂ののった」外科医(アラフィフ以上、でしょうか……)の半分以上は、多かれ少なかれ私のようにブラック・ジャックにハートを「切られて」この道を選んだのではないでしょうか。
一方、今の学生や研修医に質問すると、ブラック・ジャックの「存在を知らない」という答えがほとんどです。『医龍』や『ドクターX』(初回の連載では申し訳ない取り上げ方をしてしまいましたが……)」でもよいのですが、医療ドラマを見たとしても、録画やスマホで2〜3倍速、とのこと。
このような外科医の「ヒロイン/ヒーロー像」がないと、「生身のカラダにメスをいれる」仕事を選択しにくいのだろう……という安直な想像をするわけではありませんが、事実として、日本の外科医の数は「レッドリスト」(絶滅の恐れのある野生生物種のリスト)に入る勢いで減少の一途を辿っています。高齢化にともない、手術を必要とする人口は今より増えていくにもかかわらず、です。
今回は、日本で起きている「外科離れ」の現状を直視して、若手育成のために今から何ができるか考えてみます。20年後の日本に「手術難民(必要な手術がすぐに受けられない患者さん)」が発生しないように
本当に外科医は不足しているのでしょうか？ まず、厚労省が発表している「2020年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」を見てみましょう(図1)。「外科」を標榜する医師の数は、確かに2003年にガクッと減っていますが、その後持ち直しているし、直近の2020年だって20年前と800人くらい少ないだけなので大丈夫なのでは……？ と思われるかもしれません。
しかし、少し前に深刻な医師不足が懸念されていた「不人気仲間(すみません！ )」であったはずの産婦人科や小児科は、外科と違って最近は医師数が着実に増加していることが見て取れます。
医師は増えているけれど、外科医はどうか？
図2 全診療科の合計では医師の数は直線的に増加している
本邦の医療政策上は、人口当たりの医師数を欧米並みにする(日本では人口1,000人あたり医師2.4人に対し、OECD加盟国の平均は3.5人 [医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019-])ことが1つの目標とされています。
実際、全診療科の合計では医師の数は直線的に増加しています(図2)。その中で外科だけ「横ばい〜むしろ減少」ということは、おそらく見事な「一人負け」であることを示唆しています。いくら医師の総数を増やしても、診療科間の配分に切り込まなくては、将来の外科医療を担う人材が不足する懸念は増すばかりです
この20余年、総会員数は概ね増加傾向であり、最近は約4万人です。一方、新規入会者数を見ると、2021年は20年前の何と65％しかありません。もし会員の人口ピラミッドを描くなら、倒れそうなくらいの「つぼ型」になることでしょう。
一方で、患者さんの数はどうなっていくのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、2040年の日本の総人口は2015年から約1600万人も減少するようです
