https://www.sankei.com/article/20230216-TVXOOTU7ANPD3FRZ3XUCCWMBPU/
「話したら殺す」と脅し女児に性的暴行 消えぬ怒りと後悔…祖母が苦しみ語る
一人で留守番する小学生の女児を狙って性的暴行を繰り返した男が昨年7月、大阪府警に逮捕された。男は大阪府吹田市の無職、柳本智也被告(26)=強制性交罪などで起訴。府警が1月19日、強制性交致傷などの疑いで再逮捕したと発表した。府警によると、被害者は令和4年までの6年間で10人。被害に遭った孫と同居する50代の祖母が産経新聞の取材に応じ、「孫の心の傷が心配だ。許せないという怒りでいっぱい」と苦しみを吐露した。
「家の中に男の人が入ってきて…」
〈ごめん。帰っていたのに連絡できなかった〉
昨年5月11日の午後5時過ぎ。小学4年の孫から送られた通信アプリ「LINE」に気づいた。祖母は府内の集合住宅で孫とその母親との3人暮らし。資格取得のため不在がちな母親に代わり、孫の面倒を見ることが多かった。
すぐに電話すると、「おなかすいた」。沈んだ声なのが気になった。当時フルタイムで仕事をしていた祖母は「外でごはんを食べよう」と告げて電話を切った。駅前で待ち合わせた孫の表情は暗かった。普段は抱き着いて「お帰り」と喜ぶのに…。店に入ってもいつもの明るさは影を潜め、違和感はますます募った。「学校で何かあった?」。こう尋ねると、店内にもかかわらず大声で泣き出した。
「怖かった…。家の中に男の人が入ってきて…」
号泣しながら話す孫の様子を見て、どんな被害に遭ったか瞬時に悟った。注文をキャンセルし、店の外に出た。「悪い人は捕まえてもらわなあかんから、警察に行こう。ばあちゃんも一緒にいるから」
「殺されるんですか」
事情聴取や病院での検査…。終わったのは午前0時を回っていた。孫は疲れた様子だったが、気丈に自分の言葉で府警の捜査員に被害状況を伝えた。
学校から帰ってくると、集合住宅の階段に被告が座っていた。住人かと思って「こんにちは」とあいさつをし、自宅の鍵を取り出してドアを開けた。その直後、背後から被告に押し入られ、尻もちをついた。目隠しをされ、カーテンを閉める音が聞こえた。家族構成を聞かれ、「ママとおばあちゃん」。そう答えると、「話したら殺す」と脅されてわいせつな行為をされた−。
孫の口から語られる手口は卑劣極まりないものだった。
孫は被告にこう尋ねたという。
「わたし、殺されるんですか」「物はとられませんか」
家族が誰もいない中、一体どんな気持ちで話しかけたのだろう。一人で留守番をさせなければよかった。祖母は自分を何度も責めた。「嫌悪感や怒り、言葉では言い表せない感情で胸が苦しくなった」と振り返る。
約2カ月後、犯人が逮捕されたときはほっとして涙が出た。
孫は事件後、数日間学校を休んだが、その後は変わらずに登校している。ただ「心に落とされた暗い影は簡単にはぬぐい去れない」と感じている。
事件後しばらくは一人で階段を通ることができなくなった。今も家の中で怖がることが多い。洗面所を使うときも祖母に「見ておいて」と頼んだり、風呂も一人で入れなかったり、トイレも扉を閉めることができない。祖母は仕事の時間を調整し、孫の帰宅時間には家にいるようにしている。
「過剰な心配は逆に本人の負担になるので乗り越えてくれることを願っている」としつつ、事件の傷がさらに将来どのような形で表れるのか不安だ。
今でも事件について話すことは苦しく、忘れてしまいたい気持ちはあるが、「忘れたらなかったことになってしまう。絶対に許さないためにも覚えている」と話す。子供を欲望の対象とした被告には怒りしかない。「何をしてくれたんやという気持ち。少しでも重い刑で、少しでも長く刑務所に入ってほしい」
二度と同じような被害者を出さないためにどうしたらいいか―。「親が帰宅するまで子供が安全に過ごせる場所づくりや、下校に付き添い、家の玄関まで送り届けてくれるボランティアなど、社会全体で子供を見守る取り組みが広がってほしい」。地道な対策の必要性を感じている。