◆「歯止め」取っ払ったことが最大の負の遺産
 「総理大臣がルールを無視して『テロ』をやるんだと(思った)」「全部ひっくり返され何を信じていいのかっていう感じです」
 これらは、映画で古賀さんに吐露する現役官僚の言葉だ。第2次安倍政権発足後の2013年8月、当時の内閣法制局長官が更迭された。「憲法の番人」とされる同局の歴代長官は集団的自衛権の行使について違憲と解釈してきた。それを人事によって、合憲と容認する人物に代えたのだ。
 「テロ」「何を信じれば」という衝撃は、集団的自衛権の解釈がねじ曲げられたからだけではない。古賀さんは「法をつくったり変えたりする上で法制局は霞が関で最も厳しい関門です。政治家が無理難題を押しつけてきても『法制局で通らない』と歯止めになってきた。憲法に従わせるための歯止めが取っ払われた転換点だった」と指摘する。
 安倍政治が残した最大の負の遺産は権力の暴走を食い止めるためのさまざまな「歯止め」を形骸化させたことではないかと古賀さんは考える。「官僚も本来は政治に近い立場で過ちを指摘する役割だったはずなのですが、大半は忖度そんたくばかりの存在になってしまった。マスメディアや司法もあの手、この手でチェック機能を弱体化させられてきた」
◆選挙で勝つことで正当化、その背景は

https://www.tokyo-np.co.jp/article/245634