郵便局と下請け業者をめぐる、極めて残念な実態が明らかになった。日本郵便は4月14日、郵便物やゆうパックの配達、集荷などを委託する下請け業者の値上げ要請に対し、不適切な対応があったと発表した。

今年2月、経済産業省・中小企業庁は中小企業に対し、発注者側の企業が価格交渉や価格転嫁について適正に対応しているかを調査し、結果を発表した。148社の状況が示されたが、日本郵便は「コスト上昇分に対して価格転嫁がなされているか」という点で「むしろ減額された」との回答が多く、最低ランクの評価だった。

これに対し、日本郵政の増田寛也社長は「ここまで低レベルの得点ということは深刻な問題が内在しているのではないか。これから突き止めていかなければならない」と語っていた。

そこで、日本郵便は全国に1001ある集配郵便局と13支社で、配達・集荷などの委託契約に関する自主調査を実施したという経緯だ。


■原因は「認識不足」だが

調査の対象は2021年6月から2022年5月までの取引。下請けからのコスト上昇を理由とした委託料の引き上げ要請に対し、協議せずに据え置く、または据え置いた際に理由を文書やメールで回答しなかった例が139局、2支社でみられた。全体の約13.9%にあたる。

2022年7月に改正された下請中小企業振興法の振興基準では、価格交渉・価格転嫁について年1回以上の協議を行うことや、下請けから労務費やエネルギー価格が上昇したとの申し出があった場合に、遅滞なく協議を行うといった基準がある。

日本郵便は本社でこうした基準を認識できていなかった。「恥ずかしながら、振興基準の内容について改正があることも把握していなかった。認識が遅れてしまった」(担当者)という。そのため各郵便局や支社へ浸透させることもできなかった。

また、これまで各郵便局が下請けから要望を受けた際に、どう記録し、どのタイミングで支社に報告するか、本社と連携するかなど、手続きを明確化できていなかった。今後は書類ベースでの管理を見直し、電子化するなどで手続きの漏れを防ぐ構えだ。

現在は約5500件すべての委託契約について見直し協議を進めており、4月10日時点で2割弱が完了した。物価上昇もあるため、すべての契約の委託料を引き上げる方針だ。この原資については「会社全体の予算から生み出して実施する」など明確な説明はなかった。

日本郵便は今秋、燃料高騰や人件費上昇などを織り込み、ゆうパックの料金を値上げする予定だ。今回の全面的な契約見直しとは関係ないとしているが、一段のコスト増となれば手当ては必須。秋以降に再度の値上げに踏み切る可能性もありそうだ。


■契約外の作業を押し付ける

今回公表した事例には、単に認識不足が原因とは考えられない例もあった。毎年秋ごろ、営業用のタオルを郵便局から業者に無償で配達させていたというものだ。

1つの郵便局で発覚したものだが、契約にない作業を無償で押し付ける行為は単なる下請けいじめだ。「あってはならないこと。詳細を確認し、業者にお金を支払うことを最優先で進めている」(担当者)。この件についての処分はなされていない。事実関係を確認した上で対応するという。

下請けに対して厳しい取引を持ちかけるのは、物流業界の根深い問題と言える。2022年に公正取引委員会が物流業界を対象に行った調査(3万社の荷主と4万社の物流事業者が対象)で、運送会社からもっとも多く寄せられた回答は「買いたたき」。それに「不当な利益提供の要請」が続いた。

日本郵便も荷主企業からこうした取引を持ちかけられたら苦しいはずだ。郵便物やゆうパックの配達は、下請けの協力なくして成り立たない。委託先との関係は根本から見直す必要がある。

実際、買いたたきの弊害も散見されている。近年の郵便局の不祥事では社員に加えて、下請け会社社員によるゆうパックや代金の横領・窃取の事件も多く発生している。郵便局の集配人からは「業務を放棄するなど、質の悪い業者が多い」との声もある。

一方で、下請け運送会社の幹部からは「委託料が安いのに1人当たりが運ぶ荷物量は多い。もう2度とやりたくない」という声もあった。


https://news.yahoo.co.jp/articles/0e77d0d15bfae51dd97f501ddcfc9c5ec63a1c6c