2020年、政府が全国の各世帯に配布した通称「アベノマスク」について、単価や枚数を開示しないのは不当だとして、大学の教授らが国に情報の開示を求めた裁判で教授側が勝訴したのを受けて、国は関係する文書を開示しました。マスクは調達単価が業者によって最大2.5倍もの差があったほか、当初一部の業者とは1枚当たり最大300円(税抜き)で契約するなど、新型コロナ禍で急きょ決まった事業で、政府と業者の混乱ぶりをうかがうことができます。

 2020年4月から、政府は新型コロナウイルス対策として全国に布マスク、通称“アベノマスク”を配布しました。全世帯向けに1億3000万枚調達・配布したほか、介護事業者や学校用などあわせると全体で3億2000万枚ものマスクを調達しました。これらには税金から約543億5000万円が支出されました。契約した17の事業者は、競争入札ではなく随意契約で決まりました。

 これを受けて、神戸学院大学の上脇博之教授らが「多額の税金が投入されているにもかかわらず、契約や調達の過程に不透明な部分がある」として、国に対し、製造業者との契約に関する文書を情報公開請求しました。しかし、国は「今後の価格交渉に支障が生じる」などとして、業者に発注した単価と枚数は黒塗りにされ、開示されなかったため、上脇教授らは2020年9月、単価などの情報開示を求めて国を提訴しました。

 2023年2月28日の判決で大阪地裁は「単価や数量を開示することは今後の価格交渉などに支障を与えるものとは認められず、国が不開示としたのは不当である」として、国の不開示決定を取り消し、国に情報を開示するよう命じました。国側は控訴することなく判決は確定しました。