インドネシアが、中国やベトナム、フィリピンなどの違法漁船を「見せしめ」として爆破している。この強硬路線を進めているのが、女性のスシ・プジアストゥティ海洋・水産相(51)だ。姐御肌で、足に入れ墨を彫り込み、ジョコ大統領率いる政権内で「最も人気のある閣僚」という彼女に迫った。(夕刊フジ)


 2014年秋に就任したジョコ大統領は「海洋国家構想」を政策に掲げ、違法漁船に厳しい目を向けてきた。インドネシア近海は豊富な漁業資源に恵まれており、外国漁船の違法操業が野放し状態だったからだ。

 この対応の陣頭指揮を執ったのがスシ氏だ。

 拿捕(だほ)した違法漁船を沖合まで運び、爆薬を仕掛けて破壊し、海底に沈めたのだ。昨年5月には、中国漁船を爆破して国際社会から注目された。これまでにベトナムやフィリピン、タイなどの違法漁船約150隻を爆破してきた。

 スシ氏は高校中退後、魚の行商から身を立て、水産ビジネスで大成功を収めた同国の「女・田中角栄」ともいえる人物だ。右足首からすねにかけてフェニックス(不死鳥)の入れ墨があり、3度の結婚のうち2度が国際結婚というのも異色といえる。派手な色の服装を好み、胸元を大きく開けることでも知られる。

 インドネシア政治が専門の日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所の川村晃一研究員は「スシ氏は最も人気が高い閣僚だ。国民は、彼女の国益を守る毅然とした態度を好意的に受け止めており、メディアでも頻繁に取り上げられている。ものすごい『やり手』であることは間違いない」と解説する。

 南シナ海南端に位置するインドネシア領ナトゥナ諸島沖の排他的経済水域(EEZ)で先月、同国の監視船が違法操業を行った中国の密漁船を検挙して曳航(えいこう)していたところ、中国の監視船が体当たりを仕掛け、密漁船を奪い去る暴挙があった。

 スシ氏はこの事件をめぐっても即座に反撃に出た。1日夜、密漁していたとして逮捕した中国人船長ら3人を起訴する方針を明らかにしたのだ。

 中国政府は、操業場所は「中国の伝統的な漁場」として船員の早期解放を求めているが、スシ氏は一歩も引かず、中国が奪い去った密漁船の「返還」を強く要求した。そして、密漁船を爆破して、見せしめにする考えも示したのだ。

 世界中で違法操業を繰り返す中国漁船に、正面から戦いを挑んでいるのがスシ氏といえる。

 今後、日本でも注目されそうだ。

https://www.sankei.com/article/20160406-MF4NHH3YTZNYPD6QH4N42ZQX7Q/?outputType=amp