生後10ヵ月から義眼の女性 “普通”に囚われながらたどり着いた答え「無理して普通に憧れるなんてコスパ悪すぎ」

 「義眼少女ぴぴる」として義眼で生活するリアルな日々を発信している女性がいる。自身のYouTubeチャンネルでは義眼を着脱する様子も映しており、「閲覧注意」と注意書きされたその映像は一瞬ハッとさせられるが、メイクやファッションを楽しむさまは等身大の若い女性そのものだ。“普通”とは違うことで心ない声を浴びせられ、生きづらさを抱えてきたぴぴるさんが「無理して普通に憧れるなんてコスパ悪すぎ」という境地に至った背景とは? 話を聞いた。

■「目が変なヤツ」クラスの男子から陰口が“義眼=普通じゃない”を自覚するきっかけに

 ぴぴるさんは、右目の眼球が育たない「小眼球症」の状態で生まれ、生後10ヵ月から義眼を装着して生活してきた。

「よく『生活に不便はないですか?』と聞かれるんですが、私にとってはこれが普通。生まれてから一度も両目でものを見たことがないので、ほかの方の"普通"とは比べられないんです。むしろ病気や怪我などで後天的に義眼になった方のほうが、ご不便な思いをされてるんじゃないかなと思います」

 2019年5月にYouTubeチャンネル「義眼少女ぴぴる」を開設。義眼のメンテナンス方法や義眼メイクなど、義眼でより快適に生活する方法を発信している。

「義眼は1日5~6回外して洗います。幼稚園くらいまではそれが普通だと思ってましたね。みんな休み時間とかに外して洗ってるんだろうなって」

 自分が“普通”とは違うことに決定的に気づいたのは小学3年生の頃。クラスの男子から「目が変なやつ」と陰口を叩かれ、義眼にコンプレックスを抱くようになった。

「あとは『目の中どうなってるの?』と聞かれることもよくあって。子どもって遠慮がないから、平気でプライバシーに踏み込んでくるんです。純粋に知りたいのかもしれないけど、私にとってはそれがすごくストレスだったし、同じような思いを抱えてる義眼ユーザーの子もいると思うんです。だったら私が情報として『こうなってるんだよ』と見せてあげれば、傷つく子も減るんじゃないかと思ってYouTubeで公開するようになりました」

 YouTubeチャンネルでは視聴者の義眼についての疑問や質問に答える形の動画も多数投稿している。

「『義眼って球体だと思ってました』というコメントはすごく多いですね。あるゲームで義眼がゴロッと出てくるシーンが有名みたいで。あとたまに『義眼カッコいい』というコメントもあります。アニメとか漫画で義眼キャラが特殊能力を持ってるように描かれることがあるからなのかもしれないですけど、『いやいや、そんないいものじゃないですよ』って思います(苦笑)」

 生まれつき右目失明のぴぴるさんだが、左目の矯正視力が基準以上あるため障がい認定はされない。義眼の費用も全額負担で、安くても15万円前後と若い女性にとっては重い負担だ。厚労省では2年に一度の交換を推奨しているが、ぴぴるさんは「5年以上、新しい義眼を作っていない」という。

「特に多いのが『義眼よりも眼帯のほうがいいのでは?』というコメント。これは面と向かっても本当によく言われるので、義眼の身体的なメリットや眼帯を選択しない理由も動画に上げました。でもその理由を知る前になぜ『眼帯のほうがいい』と言うのかが、私にとっては逆に疑問です。やっぱり眼帯のほうが違和感なく普通に見えるからなのかな、人にも普通であってほしいのかなとか……いろいろ考えちゃいますね」
https://news.yahoo.co.jp/articles/3803ef94be05772ef7d42562faa6bc1a4d306c96