ロシアの侵略を受けたウクライナの大規模反攻が5月にも始まるとの観測が強まっている。ゼレンスキー大統領が各国に供与を求めた戦車や装甲車などの戦闘車両は1700両以上集まった。ロシア軍が掌握する東部や南部での攻勢が予想されるが、「大戦車軍団」で戦況を打開し、ロシアのプーチン大統領を震え上がらせることはできるのか。

【写真】ウクライナ軍の攻撃で破壊されたとするロシア軍陣地

■反撃の口火どこから

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長によると、NATO加盟国と友好国がウクライナに供与した戦闘車両は装甲車が1550両以上、戦車が230両以上で、各国がウクライナに約束したうちの98%以上が引き渡されたことになる。

戦車では、ドイツ製の「レオパルト2」や、英国の「チャレンジャー2」、米国の「エイブラムス」などが到着した。

ストルテンベルグ氏は「同国の9つ以上の旅団を訓練した」と表明。今月末までに12旅団を編成する予定と伝えられている。

ロシアは昨年、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州、南部のヘルソン州とザポロジエ州について一方的に併合を宣言した。2014年にはクリミア半島を併合したが、ウクライナはどこで反撃の口火を切るのか。

元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は、@ザポロジエ州からアゾフ海の海岸線到達を目指すAヘルソン州からクリミア半島の付け根を目標とするB激戦が続く東部地域―のいずれかを想定する。

「通常、優勢を確保するには敵方の3倍の戦力を要する。ウクライナ軍は戦力を集中させるため、3正面のうちいずれかを選択するだろう。戦車や歩兵戦闘車は、なるべく障害の少ない地域をロシア軍が対応できない速度で進軍し、配備が薄い主力部隊の後方を狙う迂回(うかい)戦術が考えられる」という。

■「成功確率は50%」

渡部悦和氏「戦力集中のため、3正面のいずれかを選択するだろう」

供与された戦車はどのように使われるのか。軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「戦車は敵の塹壕(ざんごう)を越え、戦車砲が敵方の戦車や歩兵戦闘車、塹壕の中の歩兵を標的に攻撃しつつ、相手の前線を押し下げる戦力になる。ただ、戦車単独で万能なわけではない。対戦車ミサイルを持つ敵兵には歩兵戦闘車の兵士が対峙(たいじ)し、鉄条網や対戦車壕、地雷原などには工兵が対処することが必要だ。空域からの攻撃にも弱いので制空権を握れるか、戦車の燃料の補給が続くかもカギになる」と指摘する。

ロシア軍も主力戦車「アルマタ」を作戦地域に投入したと国営ロシア通信が伝えた。米欧製戦車に対抗する狙いもみえるが、渡部氏は「『レオパルト2を超える』など宣伝されたが量産もできず、信用できない」とみる。

ウクライナ軍にとっては航空兵力も課題だ。ポーランドやスロバキアが旧ソ連製の「ミグ29」を引き渡す一方、欧米製戦闘機の供与は決まっていない。「ミグ戦闘機を十分に活用し、ドローンを偵察や戦果の確認に用いるしかない」と世良氏はいう。

ウクライナは勝機をつかめるか。渡部氏は「反攻の前提条件はそろいつつある。成功する確率は50%以上とみているが、楽観はできない」と強調した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/20e1692b883de0abcdf6c00bb4aaa52d7a6c0fb8