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自民党最大派閥の安倍派で、安倍晋三・元首相の後継会長選びが停滞している。
有力候補は絞られつつあるものの、いずれも決定打を欠くためだ。
早期の衆院解散の観測も飛び交う中、派閥の分裂回避を優先し、複数の幹部で運営する現状維持を望む声も出ている。

 「皆さんで納得できる人を選んでいかなければならない。派内でよく意見交換しながら収れんしたい」

 萩生田政調会長は30日、訪問先のフィリピンで記者団に対し、新会長の選出について、こう強調した。
萩生田氏は過去に、「安倍氏の一周忌(7月8日)までをめどに、しかるべきリーダーを立てたい」と語っていたが、急がない考えを示したものだ。

 萩生田氏は、会長の有力候補の一人と目されている。
4月29日から5月3日にかけてインドネシアとの2か国を歴訪中で、この日はフィリピンのサラ・ドゥテルテ副大統領と会談した。

 派内では、萩生田氏と、西村経済産業相の2人を軸に会長選びが進むとみられている。
ともに安倍氏の側近だったことで知られ、政府や党の要職を経験している。
元会長で今も同派に一定の影響力を持つ森喜朗・元首相は「あと5年は後見人として関与する」と周囲に伝え、新会長候補として複数の名前を挙げているが、萩生田、西村両氏を競わせる意向とされる。

 安倍派は現在、塩谷立、下村博文両会長代理を中心とする暫定的な運営体制を続けており、下村氏を推す声や、参院安倍派をまとめる世耕弘成参院幹事長を共同代表とする案もある。
総裁選出馬に意欲を持つ議員が複数いることから、新会長を総裁候補と切り分けるべきだとの意見もある。

 森氏や派幹部が気にかけるのは、主導権争いによる分裂だ。
「鉄の結束」を誇った田中派や竹下派の分裂例を踏まえ、政界では「派閥が100人を超えると分裂する」との戒めが言い伝えられている。
安倍氏も生前、気にしていたとされるが、安倍派は4月27日、衆参補欠選挙で初当選した議員ら4人が入会し、所属議員が100人に達した。

 幹部の一人は「無理に会長を選び、派内で摩擦を生むべきではない」と訴える。
年内の衆院解散もささやかれており、会長選びより、それぞれの地元活動に力を注ぐべきだとの声も広がっている。
5月16日に予定される安倍派の政治資金パーティーでも「新会長のお披露目は間に合わない」との見方がもっぱらだ。