https://www.kobe-np.co.jp/news/culture/202303/sp/0016130198.shtml

王位戦、女流王位戦(いずれも神戸新聞社主催)のタイトルホルダーによる毎年恒例の「王位・女流王位記念対局」は、昨年に続き藤井聡太王位(20)と里見香奈女流王位(31)による対戦となりました。藤井王位は「お~いお茶杯第63期王位戦7番勝負」で豊島将之九段(32)=兵庫県尼崎市=を4勝1敗で破り3連覇を果たしました。里見女流王位は、第33期女流王位戦5番勝負で西山朋佳女流二冠(27)の挑戦を3勝1敗で退け4連覇。通算8期目の女流王位獲得となりました。各棋戦で活躍する両者の対局は、里見女流王位の中飛車に、藤井王位が急戦で対応する対抗形になりました。
 2022年で最も活躍した棋士と女流棋士が顔をそろえた。

 昨年、藤井聡太王位は五つのタイトル戦に登場し、すべて勝利。さらにタイトルを増やそうとしている。

 里見香奈女流王位は八つの女流タイトル戦すべてを戦い、女流六冠を達成。公式戦では棋王戦で本戦入りを決めた。棋士編入試験挑戦も記憶に新しい。

 多忙な両者の日程調整が難しく、通常なら新年の紙面に掲載される「王位・女流王位記念対局」は、年明けにずれ込んだ。藤井と里見が、記念対局で顔を合わせるのはこれで3度目。公式戦ではないが、両者とも意識は、ひたすら盤上にあった。

 藤井が「里見女流王位は、先手中飛車を得意にされているので、この展開が一番可能性は高いと思ってました」と話すように、戦型は、中飛車対居飛車急戦となった。

■積極的に動くが

 まず局面を動かしたのは里見。■4五歩~■6五銀と積極策をみせた。

 藤井は□5六歩を拠点にして、押さえ込みを図る。

 続いて先手は、角交換から■6三角と打ち込み、■7四角成と馬をつくった。後手陣にプレッシャーをかけながら、主導権を奪おうとしている。

 藤井は「先手の馬に攻め込まれないように」と、慎重な駒組みを意識。□5五銀と手厚く構えた。

 次の■4七銀打が疑問。ここまで攻めをみせていた里見だったが、やや消極的な手となってしまった。

 藤井は「■4七銀打は、■6六銀の方が良かったのでは。□同銀■同歩に、もう一度□5五銀と打ちます。以下■6五歩と突いて□6六角■6四歩□5七歩成■6三歩成。こちらも急所にと金を作ることができますが、先手の6三にできたと金も強力で、形勢は難しい」と振り返った。

 里見もこの意見に同意しており「□5五銀と打たれた次に、具体的な良い手を見つけられなかった。そこが実力」と反省していた。

 やや指しやすそうな局面を迎えた藤井。第1図からどうやって手をつくっていくのだろうか。