ワイドショーが善悪を決めていいのか 加藤文宏

二〇二二年七月八日の安倍晋三元総理の暗殺事件の直後から十一月まで、月曜から金曜の週五日、各放送局のワイドショーは放送時間の大半を割いて旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を追及する番組を放送した。放送回数、時間ともに驚くほどの力の入れようで、ワイドショーは異例の視聴率を記録している。 なかでも日本テレビ系列の「情報ライブ ミヤネ屋」は暗殺事件前の平均と比較して二%ほど高い七%台となる世帯視聴率を達成しただけでなく、テレビをつけている世帯全体に対して特定の番組にチャンネルを合わせている世帯の割合を示す占有率では、三〇%を超えるシェアを長期間維持し、午前午後を問わず他のワイドショーを圧倒した(以後視聴率はビデオリサーチ調べ。占有率は八月七日付ヤフーニュース、鈴木祐司「〝教団と政治〟が分けたワイドショーの明暗」より)。

「ミヤネ屋」の後を追うTBS系列の「ゴゴスマ」も、旧統一教会に関する似通った内容を扱ってきた。しかし五月に「ミヤネ屋」の視聴率と占有率を抜いたこともある「ゴゴスマ」が逆転どころか肉薄すらできないまま、スポーツ紙やネット媒体が番組を取り上げた回数でも「ミヤネ屋」の後塵を拝し続けた。

この現象は放送業界で「ミヤネ屋一人勝ち」と呼ばれたが、同番組が視聴者を惹きつけて離さなかったのには理由があった。

コメンテーターによる増幅

「ミヤネ屋」が特異だったのは弁護士の紀藤正樹氏、ジャーナリストの有田芳生、鈴木エイト両氏といったコメンテーターを揃え、善悪の裁定を全会一致で畳み掛けた点だ。旧統一教会の言い分や疑惑の議員を紹介してコメンテーターが解説という名目の「糾弾会」を始めると、異論が挟まれることなく同質の意見だけが反響し合ってあらゆる方向から増幅されて返ってくる「エコーチェンバー現象」が発生した。

https://www.sankei.com/article/20230417-F3ADDNNCUVHXXNE4AKGX647BS4/?outputType=theme_monthly-seiron