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“大阪仕込み”職質力磨く 県警警察官、府警に派遣10年 観察眼向上 犯罪の芽摘む
熊本県警は、自動車警らや交番勤務を担当する地域警察官の職務質問のスキルアップに力を入れている。2014年から大阪府警に中堅警察官を派遣して学ばせており、今年で10年目。“大阪仕込み”の技術を熊本で還元し、犯罪の芽を摘み取っている。
県警では従来から、職務質問の経験豊かなベテランら「職質技能指導員」が後進を指導。10年前は指導員12人の大半が50代で、教え方にも差があり、若返りや指導水準の底上げが課題だった。このため14年から大阪府警に1人ずつ、2年間出向させるようになった。
出向第1号は指導員で最年少だった本部地域課の山口集［つどい］警部（42）。大阪市の繁華街・ミナミを抱える第1方面機動警ら隊でパトカーに乗り、場数を踏んだ。「大阪は違法薬物や銃刀所持など事案が多く、職質から何も摘発しない日はないほどだった」。相手がこちらを見て方向を変えたり、顔を背けたりする一瞬を見逃さず、違和感を察知する力を養ったという。
警察官職務執行法は、異常な挙動や周囲の状況から合理的に判断し「何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」などを止めて質問できると規定。時に難しい判断も伴うが、山口警部は「少しでも違和感があれば、ためらわず声をかけることや、所持品検査への自然で迅速な入り方を学んだ」という。
府警では講義やロールプレーイング研修も充実しており、県警でも導入した。現場指導では研修生1人に付ける指導員を2人に増やした。現在の指導員は山口警部ら11人で、30〜40代が8人と若返った。府警には現在5人目が出向中だ。
県警が摘発する刑法犯のうち、約1割は職務質問がきっかけという。ここ数年の割合は、新型コロナ下で人出が減った影響で下がっているが、若手警察官が鋭い観察眼から職務質問し、現行犯逮捕した例も。熊本中央署の2人が晴天に傘を持った男を見つけ、女性の後をつけていたため声をかけると、傘の先に仕込んだカメラで下半身を盗撮していたことを認めたという。
県警は、約千人いる地域警察官の「職質力」を磨くことが治安の向上につながると期待。県警地域課の入江真也次席（59）は「今後も府警への派遣を続け、スキルアップと継承に力を入れる。強引な職質にならないよう適正に運用し、県民の安全安心を守りたい」と話す。
