中国が「日本化」の波に飲まれていく…バブル経済の崩壊前と酷似した状況を英紙が危惧
世界第2位の経済大国に成長した中国の現状が、90年代前半のバブル期の日本と酷似しているという。急速な経済成長から一転、長期の景気低迷に陥った日本と中国が同じ道をたどる可能性を、英経済紙が検証した。
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バブル経済の崩壊は、日本人にとっては思い出したくもない悪夢だろう。だが、中国は隣国の負の記憶を教訓にしようとするかもしれない。
不動産バブルがはじけるとともに爆発する“時限爆弾”が、中国でも時を刻んでいるからだ。
バブル崩壊前の日本経済と、現在の中国経済には多くの類似性があると指摘されている。最新の研究によれば、中国に「日本化」の波が押し寄せる可能性もあるという。
かつての日本経済は米国のそれを追い抜くと見られていたが、90年代にその可能性は消えた。2003年になると、日本はもはや「すべて順調だ」とうぬぼれていられない状況に陥った。その後も、虚栄に満ちた80年代の不良債権の処理を誤り、「日本はすぐに立ち直る」という見通しも消えた。
2000~03年にかけて、日本政府の支援のもとに大規模な銀行合併がおこなわれたが、連動する危機の数々が解決されるには至らなかった。
2003年3月、三井住友フィナンシャルグループは巨額の損失を出し、慌ただしく子会社を逆さ合併した。同年4月には、国内大手のりそな銀行が破綻の兆しを見せ、5月には、170億ドル(当時約2兆円)の税金を投入する救済措置がとられた。
同年末、追い打ちをかけるように大手地銀の足利銀行が破綻した。こうした出来事はすべて、先延ばしされた「爆発」だった。もっと早くにはじけていれば、被害はもっと少なくすんだかもしれない。
日中両国は、経済成長を促すための融資の仕方も似ている。日本のバブル経済は、政府に後押しされた商業銀行が景気のよい産業に長期低利で貸し付ける間接金融によって成長した。中国も同様に、間接金融に依存した金融システムを構築してきた。中国政府は、中央銀行である中国人民銀行のみならず、商業銀行の融資活動も操作できるのだ。
80年代に日本政府が内需を促進するため、金融緩和政策を導入すると、日本の不動産バブルは急速に拡大した。
借入金が飛躍的に増大し、株式と不動産が流動化した結果、企業はビジネスよりも、金融投機からのほうが高い収益を得られるようになった。
それから数十年を経て、中国も実体経済と金融システムを切り離した。シティグループによると、中国の不動産市場は2020年までに65兆ドル(約8900兆円)に達した。これは米国、EU、日本の市場の合計を超えており、明らかなバブルと言える。
2021年には、中国の銀行の総資産の41%を不動産関係の融資と貸し付けが占めた。日中どちらの場合も、不動産バブルを加速させたのは、正規の方法では銀行融資を受けられない人に融資をする「影の銀行」だ。この融資の市場は、国が課す融資制限をくぐり抜けるために生まれ、肥大していった。
投資家は「中国のリスク」に注意を払うべき
シティグループは、日中と米国の関係にまで類似点を見出している。バブル期に日本経済が成長すると、技術、知財、安全保障の問題を巡って日米貿易戦争が激化した。一方、近年の米国は中国を意識してか、国外からの先進技術へのアクセスを制限する法整備を講じる。
こうした類似点があるからといって、当時の日本と現在の中国が完全に同じだとは言えないかもしれない。だが、こうした状況から受ける影響には、共通するものがあるだろう。20年前、日本はまさにバブル崩壊のどん底を経験していた。
ゾンビ企業の負債が、金融機関のバランスシートを圧迫した。さらに、企業も家計も長期的なデレバレッジに突入し、低金利が続いた。
シティグループはこう結論づける――「日本化」は中国にも起こりうることであり、投資家は同国のリスクに注意を払うべきだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/aa20e07bf86f34b821ba7e2c12219b6649840c2d?page=1