横浜みなとみらいで進む「オフィス離れ」の超深刻
割安な「品川・汐留・晴海」に企業需要奪われる

首都圏のオフィス仲介会社の幹部は、「みなとみらい21地区に本社移転する大手企業の需要は一巡した印象だ。都心でハイグレードな大型オフィスビルが空いているのに、みなとみらい21地区の物件をわざわざ選ぶテナントはいない」と指摘する。

さらに、みなとみらい21地区のオフィスビルにとって向かい風となるのが、都心のオフィス賃料相場の下落だ。コロナ前の都心の大型オフィスビルは空室が少なく、賃料も高かった。そうした中、相対的に賃料水準が低かったみなとみらい21地区は、自治体の補助金による後押しもあってオフィスのコストを抑えたい企業の受け皿となっていた。

ところが、空室が増えたことで、都心ではテナントを呼び込むため賃料水準を引き下げるオフィスビルが後を絶たない。三鬼商事によれば、2023年3月末時点の東京都港区のオフィスビルでさえも1坪当たりの平均賃料が2万円を下回っている。対して、みなとみらい21地区は同2万円超もあり、依然として高水準だ。

「オフィス需要が伸び悩む中、品川・汐留・晴海をはじめとする東京湾岸エリアなど、賃料水準を落とした都心の大型ビルにオフィス需要を奪われている」と、不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの熊谷真理ヘッド・オブ・リサーチ&コンサルティングは分析する。

テナントへの賃貸をあきらめて、自社利用するオフィスビルも出てきた。LG Holdings Japanによる大型オフィスビル「LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER」(延べ床面積は約1万坪)は2022年3月に稼働した物件だ。2023年4月末時点でも空室が残っており、大半はLGが使用している。

「当初はオフィスの半分以上を賃貸して収益を稼ぐつもりだったが、リーシングが上手く進まず、結局は一部フロアも自分たちで使わざるを得なくなったようだ。賃料は一時期、1坪当たり2万円を割った」と、前出のオフィス仲介幹部は明かす。

テレワークの浸透などでオフィス需要が伸び悩む中、大型ビルが大量供給されるみなとみらい21地区の苦戦は当面続きそうだ。

https://toyokeizai.net/articles/-/670097?page=3