https://news.yahoo.co.jp/articles/1218a2f837f49da24c5bceb23d194aa38f694468
カカオ栽培がガーナの森林破壊の原因に NGOが「世界のチョコ成績表」発表
チョコレートの原料となるカカオ豆の栽培が、主産地であるガーナの森林破壊の大きな原因になっている。特に日本で消費されるカカオ豆の最大の輸入国はガーナであるため、ガーナの森林減少は日本と無関係ではない。現地調査を行った森林NGOで、世界のチョコ関連企業を評価した「世界のチョコ成績表2023」にも関わっている熱帯林行動ネットワークから話を聞いた。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
■カカオ農家の収入は、チョコの値段の6%
熱帯林行動ネットワークの榎本肇さんが視察したカカオ栽培地は、クロコスア・ヒルズという森林保護区。コートジボワールに近い州にある森林減少率の高い地域だ。榎本さんによると、ガーナの森林破壊の原因はカカオ栽培の他に金の採掘や商業伐採もあるが、このうち日本の関与が最も大きいのがカカオ栽培だという。
カカオの木は、日本でも庭木として馴染みのあるアオギリの仲間だ。この木の植林がなぜ森林破壊につながるのだろうか。榎本さんはその背景に「カカオ農家が十分な収入を得られていないこと」があると指摘する。
ガーナではカカオ農家の収入は1日約84セント(約115円)で、その金額は世界銀行による一般世帯の貧困定義(1日の収入1.90ドル)をはるかに下回っている。そのため農家は収入を増やそうと、カカオ農園を切り開き、それが森林破壊へとつながっているという。
「カカオ豆の国際価格はロンドンやニューヨークの先物取引市場で決まります。ガーナ政府はカカオ豆の価格について農場レベルの買取価格を設定していますが、国際価格の影響は免れません。また、カカオがメーカーに届くまでに多くのサプライヤーや加工業者を経由しますが、農家の収入として得られる金額は消費者が払うチョコレートの代金のわずか6%です」。
■世界のチョコ関連企業を評価する「成績表」
3月に発表された「世界のチョコ成績表2023」は、カカオ豆のサプライチェーンに関わる世界の大手企業を対象に、各企業の人権や環境問題への取り組みを評価したものだ。アンケートによる回答を元に、NGOや大学、コンサルタントなど35団体が評価した。
評価項目は次の6部門だ。
• トレーサビリティ(追跡可能性)と透明性
• 生計維持所得
• 児童労働
• 森林破壊と気候
• アグロフォレストリー(樹木を植え、樹木の間で農作物や家畜を育てるなど)
• 農薬(殺虫剤)管理
つまり、良い評価を得るためには、まず原料を生産する農場が特定できなければならない。農場では生計を維持できるほどの給料を払っているかどうかも重要で、児童労働などはもってのほかだ。さらに、森林破壊と気候変動にも配慮する必要があり、森林破壊を防ぐためには、アグロフォレストリーも必須だ。加えて、カカオを栽培しながら森林生態系を維持するには、農薬管理も大事な評価ポイントになる。
2023年は世界53社の企業が対象となった。日本からは不二製油グループ本社、明治ホールディングス、伊藤忠商事、ロッテ、森永製菓、江崎グリコ、大東カカオ、小売業のファミリーマートの計8社がアンケートに参加した。いずれの日本企業も児童労働の排除に積極的に取り組み、トレーサビリティにも改善が見られるという。しかし、その足取りは遅いそうだ。