自治体にとって「マンション管理」が新たな重点課題になっている。
築年数が経った「高齢化マンション」の急増が見込まれ、管理が行き届かなくなれば、一帯の街づくりに深刻な事態を及ぼしかねないからだ。
マンションが林立する東京のベッドタウン・埼玉県所沢市の取り組みから、現状の一端を見た。
西武線が走り、都心に通う多くの会社員らが暮らす所沢市には約500棟の分譲マンションがある。市によると、市民の約15%にあたる5万人ほどが住んでいるとみられる。
その一つのマンションに、都内に勤める男性(70)が引っ越してきたのは30年ほど前。不動産会社が建物管理も担い、毎月の管理費と修繕費を集めていた。
ところが数年前、耐用年数を超えたエレベーターの交換時に不動産会社から「修繕費は残っていない」と費用の負担を求められた。
不審に思った男性が調べると、マンション管理業者は国土交通省への登録が必要なのに、不動産会社にその資格はなかった。
これまで管理費や修繕費の使途明細は出さず、監査も受けていなかった。大規模修繕の時期が迫っていたため、住民たちで管理組合を発足させ、新たな管理業者を探して契約を結んだ。
「マンションを買う際、通常は通勤の便と生活環境と価格で決めてしまう。マンション管理の法律まで知っておくべきだった。自分たちにも落ち度はあった」と男性は後悔している。
所沢市が分譲マンションの管理組合に対し、管理状況を5年ごとに届け出るように義務づける「マンション管理適正化推進条例」を施行したのは、昨年4月だ。
マンションの老朽化は全国的な問題で、廊下の落下のほか、外壁や手すりの崩落などの事案が出ている。
このため、国が2020年に法律を改正し、自治体がマンション管理に積極的にかかわれるようにした。所沢市は条例に、新築マンション事業者に分譲前の長期修繕計画の届け出を義務づけるなどの独自策を盛り込んだ。
「誰かが管理してくれると…」
所沢市の場合、21年末時点…
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https://www.asahi.com/articles/ASR5576B3R4NUTNB00R.html