こんなにも面白い医学の世界 第63回 O型の人は出血死しやすい?
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第63回 O型の人は出血死しやすい?
レジデントノート2019年12月号掲載
私の血液型はA型なのですが,それを聞いた人はみんな驚きます.私の性格は典型的なA型ではないからだそうです.血液型を決定する抗原は血球だけではなく,臓器や毛髪にも分布しているため,もはや「血液型」という言葉そのものが適当ではないのかもしれません.そう考えてみると,血液型で性格がある程度決まる,という仮説は正しいような気もしますが,今のところ血液型の性格診断は根拠に乏しいとされています.血液型と疾患の研究は30年以上も前から行われており,血液型と関連する疾患について少しずつわかってきました1).なかでも,ABO型血液型で,O型の人は出血をしやすい,という話は有名です.

トリビアイメージ
いくつか論文を紹介しますと,O型の人は深部静脈血栓の発生率が有意に低いことがわかっています2).また,胃炎や胃潰瘍で出血した患者さんの背景を調べてみると,O型の患者さんは他の血液型に比べて有意に出血のリスクが高いことが報告されています3).この原因については比較的明快な説明がなされていて,O型の人は健常者であっても,フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:vWF)のレベルが他の血液型に比べて25~30%しかないことが指摘されています.vWFは血管内皮細胞および巨核球で産生され,血漿,血管内皮下組織および血小板に存在し,血管が損傷したときに動員され血小板の粘着や凝集に関与する,いわゆる「一次止血」の役目を果たします.また,vWFは凝固第Ⅷ因子のキャリアとしての働きもしますから,O型の人は他の血液型に比べて第Ⅷ因子活性も低下しています.

では,なぜO型ではvWFが少ないのかというと,これはよくわかっていません.いくつか仮説があり,O型の人ではvWFのクリアランスが速く,それはO型の人の血中に多いvWF分解酵素(別名:「ADAMTS13」)によって分解を受けやすいため,という説があるようです4).

最近,重症外傷の患者さん901人の分析から,O型の患者さんの死亡率が28%,その他の血液型は11%であることがわかりました5).外傷の死因はほぼ出血ですから,やはりO型の人は出血死しやすいことが推測されます.

重いけがで救急搬送されたO型の患者は、それ以外の血液型の人に比べ、死亡率が2倍以上高いとの研究結果を、東京医科歯科大の高山渉特任助教(外傷外科)らが2日、救急医学の専門誌に発表した。O型は他の型に比べて血が固まりにくく、大量出血する人が多い可能性があるという。

O型の患者には、医療現場でより慎重に止血するなどの対応が求められる可能性がある。高山さんは「死亡が多くなる仕組みを、さらに詳しく調べる必要がある」と話している。

2013~15年度に入院が必要となる重いけがで東京医科歯科大病院など2病院に運ばれた患者901人のデータを分析。死亡率はO型が28%、O型以外が11%と差があることが分かった。

けがをして血管が破れると血液中の血小板が集まって傷をふさぐが、O型の人は血小板をくっつけてのりのような働きをするタンパク質の一種が少ないことが知られている。これが原因で大量出血が増え、他の血液型と死亡率に差が出た可能性がある。

一方で、エコノミークラス症候群のように静脈内に血の塊ができる病気はO型の方が少ないことが示されている。O型は日本人の3割を占める比較的多い血液型。〔共同〕


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30063700S8A500C1000000/

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