アフガニスタンで2021年8月、イスラム主義組織タリバンが復権した。日本政府は緊急措置として、首都カブールの日本大使館で働いていたアフガン人の現地職員とその家族を日本に避難させた。現地職員らが「外国政府の協力者」として、タリバンに拘束されたり、処罰されたりする危険があったためだ。
 来日して一安心と思っていた現地職員らは、日本の外務省職員から意外な言葉をかけられる。「いつアフガンへ帰るのか」「日本での生活は難しい」…。繰り返し帰国を促され、一部の職員と家族は翌年、アフガンへ戻った。だが、現地で身の危険を感じ、再び来日した人もいる。
 日本政府は、日本のために働いてくれた人を、迫害の恐れのある母国に追い返した形だ。一体、何が起きていたのか。現地職員らへの取材を基に、再現する。(共同通信編集委員=原真)

 2021年10月から12月にかけて、外務省の手配で来日したのは、現地職員と家族計169人。ところが、日本で待っていたのは思いがけない仕打ちだった。
彼らは東京都内の宿泊施設に入った直後から、外務省職員にこんな言葉でアフガンへの帰国を強く勧められた。「日本語ができないと、家を借りられない」「仕事も見つからない。帰った方がいい」
 中には、「日本での生活は難しい。地獄のようになるよ。家族と相談して決めてください」と言われた人もいる。
 さらに、2022年8月末で雇用契約を打ち切るとも通告され、宿泊施設から退去するよう求められた。一方で、アフガンに帰国するなら渡航費用は外務省が負担し、大使館で雇用を継続、給料を引き上げると提案された。

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