AI駆使してビリオネア、M&A総研32歳社長-企業後継者問題に挑む
佐上峻作社長(32)は祖父が経営していた会社を後継者不在で廃業する様子を目の当たりにしていた。その時の思いを胸に中小企業の合併・買収(M&A)を仲介するM&A総合研究所を創業して、短期間で資産は一時10億ドルを超えるビリオネアになった。
「祖父の姿を見て、昔から経営者である感覚は親よりあった」とブルームバーグのインタビューで佐上社長は語った。父親は警察官で、自身の感覚は経営者の祖父に近いという。80歳台で引退した祖父は大阪拠点の不動産仲介会社の廃業を決断した。事務所にあった経営に必要な免許を捨てる姿は、佐上氏に悲しく映った。
M&A総研は設立から4年弱の2022年6月に東証グロース市場に上場した。人工知能(AI)を駆使したM&A仲介が特徴で、同業他社とは対照的に株価は4月に1万1190円と公開価格の8.4倍まで上昇した。ブルームバーグのデータによると、佐上氏は自社株を72%保有しており、時価は約9億5000万ドル(約1290億円)となっている。
アシンメトリック・アドバイザーズのアナリスト、ティモシー・モース氏(シンガポール在勤)は「後継者のいない高齢の創業者を抱える中小企業の中には、事業売却に前向きな企業が非常に多くなっている」と指摘した。「これまでは売却は文化的にポジティブに捉えられていなかったが、それが変わってきている」と述べた。
高齢化を一因に企業の後継者問題は根強く残り、M&A仲介の需要は衰えない。M&A総研のライバルとなる日本M&Aセンターホールディングス、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクの株価はいずれも年初来で大きく下落している一方、M&A総研は48%上昇だ。ビッグデータとAI技術を組み合わせたM&A総研の強みが奏功している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-15/RTLQELT0G1KW01?srnd=cojp-v2