https://news.yahoo.co.jp/byline/sakamotomasahiko/20230319-00341773
繰り返す発熱お迎え、子どもとの時間減少… 職場復帰に不安を感じる保護者へ 小児科医のアドバイス
もうすぐ4月。新年度が始まりますね。
保護者の皆さんの中には、育休明けの職場復帰・保育園入園の方もいらっしゃるかと思います。そこで、今回は小児科医の立場から、保育園入園を迎えるにあたり、知っておいていただきたいことをいくつかお話ししたいと思います。
入園後は頻繁に風邪を引くと覚悟を でも悪いことばかりではありません
保育園や幼稚園は子どもたちの集団生活の場です。これまで集団生活をしていなかったお子さんが入園すると、多くの病原体にさらされ、毎週のように熱が出ます。せっかく入園したのに、最初の頃はほとんど通えないお子さんもいます。保護者も復職して、さあこれから仕事を頑張ろう、と思った矢先に「熱が出たのでお迎えに来てください」という園からの急な連絡が重なると、めげてしまいそうですよね。
保護者の中には「自分の復職が早すぎて子どもに負担がかかってしまったのかも」と悩まれたり、「こんなに何度も風邪を引いて、生まれ持って免疫が弱い病気が隠れていたりするのでは」と不安になったりする方もいるかもしれませんね。しかしこれは一般的によくあることです。
もともと乳幼児期は風邪を引く頻度は多く、成長につれて減っていきます
1-2歳のときには1年間に6-8回、就学前は4−5回引いていたのが小学校以降は2−3回と、成長に従って減っていくのがお分かりいただけるかと思います。
とはいえ、入園後に頻回に熱を出す我が子を前に、こういった状況がいつまで続くのか、途方に暮れる方もいらっしゃるかと思います。
1827名のお子さんを2年間フォローアップし、風邪症状や病欠日数と保育施設入所との関連を調べたフィンランドの研究では、月平均の病欠日数がピークとなったのは保育園入所2か月の時点で、その後減少し、9か月を過ぎるころには落ち着いたと報告しています
もちろん風邪を引かないに越したことはありません。ただ、こんなデータもあります。カナダの研究では、就学前(2歳半より前)にグループ保育を始めたこどもは、当初は気道感染症や中耳炎の発症頻度が上がるものの、小学校に入ってからの感染症罹患はむしろ下がることが報告されているのです(3)。
このような研究があり、就学前に風邪を引くことはデメリットばかりではないと分かれば、これから保育施設に預ける保護者の皆さんも少し安心できるかもしれません。
子どももいつかは子供も集団生活を経験しないといけません。保育園や幼稚園に入園し、風邪を引くのは、必要な免疫をつけるための通過儀礼とも言えます。決して保護者の判断が悪かったとご自身を責める必要はありませんし、通っているうちに回数も減ってきますのでご安心いただければと思います。
朝熱が下がっても登園はちょっと待って 午後から再び発熱の可能性も
「前の日に熱が出ていたけど、翌日解熱している、よし登園できそう!」
そう思いたくなる気持ち、よく分かります。仕事だってできるだけ休みたくないですよね。ただ、ここで知っておいていただきたいのは、前日に熱が出ていた場合、翌朝熱が下がっていても一時的な可能性が高いという点です。治っていなくても朝は一旦解熱していることが少なくないのです。結局園に行かせても、午後からまた発熱して再び呼び出し、という経験をお持ちの方も多いかと思います。それなら前日夜に熱があるときは翌日は休むと決めた方が、結局連日呼び出しというストレスも軽減でき、子どもも早く治りますのでお勧めです。
予防接種、忘れていませんか?
日本では生まれてからほとんどのお子さんが定期接種を受けます。生後2か月から始まるヒブや肺炎球菌、四種混合ワクチンの初回接種率(累積)はおおよそ97-98%と非常に高いです。ところが1歳を過ぎてから接種するこれらのワクチンの追加接種に関しては、ヒブや肺炎球菌の接種率は94%前後とまだ高いものの、4種混合の場合は86%と下がってしまいます。また1歳で接種する水痘の1回目接種率は94%と高めですが、それから3カ月以上の間隔をあけて接種する2回目は70%と大きく下がっています(4)。その要因として、1歳を過ぎて復職などでバタバタする中で接種の機会を逃してしまうケースもあるのではと考えています。そこで、あらかじめかかりつけ医でスケジュールを確認し、家族で分担して接種スケジュールを立てることをお勧めします。
日本小児科学会では、ワクチンについての情報を「知っておきたいわくちん情報」として分かりやすくまとめており、参考になります。