「絶対にああはなりたくない。恥ずかしい。嫌だね」

 本誌『女性セブン』2023年6月1日号では、猿之助がコロナ禍に入ってから、頻繁に高級ホテルで仲間内のパーティーを開いていたことを報じた。猿之助はアルコールが入ると、いつも「香川批判」を繰り広げたという。ある参加者が語る。

「現代劇の俳優も参加するパーティーだったので、香川さんの演技力を評価する人が多かった。しかし、猿之助さんは香川さんを一刀両断するんです。“歌舞伎の稽古もろくにしたことがないから、演技は見れたもんじゃない”とか“そもそも歌舞伎役者じゃない”とか“あれで中車を名乗るのは歌舞伎の恥”とか。こちらが恐ろしくなるほどの批判ぶりでした」

 猿之助は現代劇にも力を入れ、2007年の大河ドラマ『風林火山』(NHK)に武田信玄役で出演したのを皮切りに、テレビドラマや映画に数多く出演している。

「古典歌舞伎も現代劇も、さらにテレビでも映画でも通用する演技力は、熱心な稽古に裏打ちされたものです。

 もともと、澤瀉屋は新機軸に挑戦する風土がありましたが、猿之助さんはその姿勢がことさらに強かった。2020年の『半沢直樹』(TBS系)での顔芸と“詫びろ!”の8連発は大変な話題を呼び、一部では、香川さんを超える怪演とまで言われた。役者として“自分の方が上だ”という自負もあったのでしょう」(前出・テレビ局関係者)

 その後の昨年8月、香川は銀座のクラブホステスへの性加害が『週刊新潮』で報じられ、表舞台から消えた。

「スキャンダルが出たとき、同じ澤瀉屋の一門としてショックなはずなのに、猿之助さんはそうは見えず、ますます意気軒昂でした。周囲には、“絶対にああはなりたくない。恥ずかしい。嫌だね”と漏らしていました。

 香川さんはテレビはおろか、歌舞伎への出演も一定期間見送られました。それでも猿之助さんがあまり焦った様子を見せなかったのは、“澤瀉屋には自分さえいればいい”という自信、そして“ライバル”の失墜に思うところもあったように思います」(歌舞伎関係者)

 そうした香川への態度の背景には「激しい嫉妬がある」と言うのは、前出の歌舞伎評論家だ。

「中車さんは歌舞伎のキャリアは短いが、役者として天賦の才がある。多くの歌舞伎役者が口には出さないが中車さんの才能には驚愕しているはずです。澤瀉屋の棟梁・猿翁さんの直系でありながらも、現代劇の世界の荒波のなかでのし上がった経験も胆力も常識もある。しかも東大卒です。

 一方、門閥の御曹司として幼い頃から年上の役者から気を使われるような環境で育った猿之助さんは、いくら能力が高くても、精神的には“お山の大将”。慶應大卒は立派ですが、東大にはかなわないという思いもあったようです。何より、どれだけ努力しても、澤瀉屋の傍流であることは覆せない。猿之助さんは“自分は最後は中車さんに勝てない”というルサンチマンを心のどこかに抱えていたのではないか」

 ドラマや映画に出演し、有名人・著名人の交友関係も広くなった。歌舞伎で磨いた演技力が評価され、世間でも「名優」と認められた。澤瀉屋のリーダーとして、自身の名前を冠した興行も盛況だ。香川はスキャンダルに見舞われたので、“ライバル”もいなくなった。わが世の春、とさえ思うこともあったかもしれない。

 そんなタイミングで遭遇したのが、近しい関係者が、猿之助のセクハラ・パワハラを忸怩たる思いで告発する声だった──。

https://news.yahoo.co.jp/articles/862c5ac465607d0244ae2df8069b4ea78239e9a2?page=3