熟練労働者として永住や家族帯同が認められる在留資格「特定技能2号」の受け入れ対象を従来の2分野から11分野へ拡大する政府案を自民党合同会議が了承した。
 日本で外国人が働くには、言葉の壁や法の制限がある。人手不足が常態化している職種では、玄関ではなく勝手口から家に迎え入れるよう、他の目的でつくられた制度で労働力を確保してきた。外国人技能実習制度はこれに当たる。
 2019年からは、産業界の求めもあって特定技能制度が始まった。在留期間上限5年の1号のみは9分野、建設、造船・船舶工業の2分野が2号の対象である。

内外で人権侵害の批判を浴びた技能実習制度は次々と事件が発覚し、国際貢献という名目と現状の乖離[かいり]が指摘され廃止の方向だ。
 技能実習の在留資格で静岡県内にいる外国人は約1万5千人(22年6月)。特定技能は、すべて1号で2843人だが、1年間で3・7倍と高い伸び率を見せた。
 少子化が急速に進み、外国人抜きに労働力確保は見通せない。政府や自治体は「移民」という言葉の使用を避けているが、50年後には人口の1割は外国籍になる可能性もあるという推計から目をそらさず、むしろ議論を喚起すべきだ。
 特定技能2号拡充で人材問題が解決するとは思えない。その先に見え隠れする「移民社会」は、受け入れ企業にとどまらず、地域社会の問題になる。外国人の人権が守られる仕組みはもとより、日本語教育や生活支援も課題になる。
 ギリシャ神話にキメラという怪獣が登場する。ヤギの胴にライオンの頭、蛇の尾。外国人受け入れを巡る日本の制度をこの怪獣に例える専門家もいる。キメラは火を吐くという。備えが欠かせない。

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