じつは「イクメン」の多い土地は出生率が低い…日本の出生率が「西高東低」となる本当の理由

なぜ日本の少子化は止まらないのか。
評論家の八幡和郎さんは「都道府県で出生率を比較すると、いわゆる『イクメン』が多い県は出生率が低い傾向がある。
男性が家事や子育てを手伝うようになれば少子化は改善するという前提での政策展開は、的外れなのではないか」という――。

■日本の出生率は187カ国中174位
少子高齢化を論じる場合に指標となるのは、「1人の女性が生涯で何人の子どもを産むのか?」
という合計特殊出生率である(以下、基本的には出生率と呼ぶ。
出産可能年齢とされる15~49歳の年齢別出生率を合計したもの)。
2020年の日本の出生数は84万835人で、合計特殊出生率は1.33だった。
世界の出生率ランキングでは、日本の順位は187カ国中174位であるが、
G7参加国中では6番目で、イタリアが1.24で最下位(181位)である。
G7トップはフランスの1.83(120位)で、米国、英国、ドイツ、カナダが続く。
1980年には、イギリスの1.90がトップでフランス、米国、1.75の日本が僅差で続いていた。
ちなみに、2020年時点での世界最低は韓国でなんと0.84。1980年に2.82だったのだから少子化は最も深刻だ。
同じく中国は2.61から1.70に低下している。
また、日本国内での推移を見ると1925年には5.10だったが、
1950年に3.65、1960年に2.00となり、その後も長期低落が続いている。

■国内トップ10は四国・九州に集中している
ただ、日本中、同じような数字かといえば、そんなことはない。
1位の沖縄は1.83、上位11県が1.50以上である一方、最下位の東京は1.12、下位9都道府県が1.30未満である。
この地域差は、日本の少子化の歯止めのために何が必要かという観点からも、
人口を増やせる地方へ産業などを誘導することで、少子化を回避できないかを考える上でもヒントが隠されているように思える。
2020年時点における出生率の都道府県別の順位を見てみよう(図表1)。
https://i.imgur.com/cigPWJB.jpg

上位10県は、沖縄、宮崎、鹿児島、長崎、島根、熊本、佐賀、福井、大分、鳥取である。
また、下位10都道府県は、下から東京、宮城、北海道、秋田、京都、神奈川、千葉、埼玉、神奈川、千葉、埼玉、奈良、大阪である。
つまり、上位10県でもっとも東なのは東西日本の境界線上(47都道府県は福井・滋賀・三重を真ん中に二分される)にある福井で、残りはすべて九州か中国地方である。
(中略)

■「イクメン県」は出生率ではパッとしない
一般常識からすると意外なのは、男性の子育てへの参加との相関性だ。
なんと、男性の子育て参加が少ない都道府県ほど、出生率が高い傾向がある。
総務省の社会生活基本調査(2021年)によると、「6歳未満の子どもを持つ夫の家事関連時間」(※)の
全国平均は1.54時間であり、都道府県別の数字は「イクメン!?ランキング」としてまとめられている。
※夫婦と子どもの世帯、土日を含む週全体の平均。家事関連時間とは、「家事」「介護・看護」「育児」「買い物」の時間

このランキングの下位、つまり夫が家事をしない県には石川、大分、熊本、山口、愛媛、長崎、岡山、兵庫、佐賀、沖縄と、出生率トップクラスが多く並んでいる。
ちなみに、上位5県は奈良、新潟、高知、和歌山、千葉で、出生率ではパッとしないところばかりだ。
先ほど紹介したソニー生命の調査でも、「夫がよく家事に参加している」の上位は、群馬、東京、岩手、三重、和歌山、
「夫がよく子育てに参加している」の上位は、宮崎、岩手、山梨、佐賀、北海道、神奈川、兵庫といったところで、出生率下位の県が目立つ。
こうした数字からは、「男性が家事や子育てを手伝うようになれば少子化は改善する」
という前提での政策展開は、あまり効果がないのではないかという疑いが出てくる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3cabb4a04526bb2f3b8ef4739ce6496072ccd33b