1 人あたり GDP で日本は韓国・台湾に肉薄され、中国からは激しく追い上げられてい
る。その要因の1つとしてハイテク製品輸出の長期低迷が挙げられるが、それは科学技 術分野における研究・開発費力の後退に起因するところが大きい。
研究・開発力の強化には、前提条件として科学技術分野における高度専門人材の育 成が不可欠であるが、高等教育における公財政支出の乏しさなどに起因して、日本は他 の主要国に比べ修士・博士号取得者数が少なく、この点でも遅れをとっている。
日本が高付加価値製品における輸出競争力を取り戻すには、労働力の質の改善と技 術進歩が必須である。そのためには、科学技術分野を中心とした大学院教育の拡充が 強く求められる。
1. アジア唯一の「先進国」からアジアの「中進国」へ?
4 月 7 日、IMF が最新 2023 年 4 月版の「世界経済見通しデータベース」を公表した(図表 1)。 それによると、2022 年における日本の 1 人あたり名目 GDP は 33,822 ドルで、2002 年以来最低を 記録した。円安・ドル高に起因するところが大きいとはいえ、ピークをつけた 2012 年の 49,175 ドル に比べると 3 割減である。日本の 1 人あたり GDP は、2000 年にはルクセンブルクに次ぐ世界第 2 位、2010 年には第 18 位に位置していたが、2022 年時点の順位をみると、第 31 位にまで凋落し ている。

https://www.smtb.jp/-/media/tb/personal/useful/report-economy/pdf/134_2.pdf