国税庁は29日、信託型と呼ばれるストックオプション(株式購入権)について、給与としての税務処理が必要だとの見解を示した。企業は権利行使で得た株式の売却に対して20%の税金がかかると認識していたが、給与として最大で55%の税金が課され、想定より税負担が増えることになる。

同日、スタートアップの関連団体が都内で開いた説明会で明らかにした。近くホームページでもQ&Aを公開するとみられる。

説明会で国税庁は「役職員には金銭の負担がない」として企業の認識している税務処理を否定した。

信託型の株式購入権は利便性の高さから近年、導入企業が増えており、上場企業を含めて約800社が導入している。Q&Aは法令ではないが、見解と異なる税務処理を行った場合は、申告漏れなどを指摘される可能性が高い。

給与にかかわる所得税は従業員の支払い分の一定額を企業が代わりに納める源泉徴収義務がある。説明会では「権利行使で株式が交付されている場合、給与課税の対象となり、源泉所得税の納付が必要」と明言した。「一括納付が困難な場合、申請で分割納付が認められる場合がある」としたが、すでに権利行使が進んでいる上場企業を中心に影響が広がりそうだ。

説明会では海外と比べて利便性の低さが指摘されている既存制度について、税制改正で改善に取り組む方針も示した。

日本経済新聞 2023年5月29日 17:19 (2023年5月29日 19:32更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC295H10Z20C23A5000000/