コソヴォでセルビア系デモ隊とNATO部隊が衝突 アルバニア系市長誕生に反発
コソヴォ北部で、セルビア系住民らが抗議デモを繰り広げ、警察や北大西洋条約機構(NATO)平和維持部隊と衝突している。29日には同部隊の約25人がけがを負い、NATOは「まったく受け入れられない」と非難している。
コソヴォはセルビアの自治州だったが、セルビア系住民と多数派のアルバニア系住民の緊張関係が長年続いた後の2008年2月、独立を宣言した。
北部の4自治体では今年4月、地方選挙があったが、セルビア系住民がボイコット。投票率4%未満でアルバニア系住民が地方議会を握り、アルバニア系の市長も誕生した。これを受け、情勢不安が生じている。
北部の都市ズヴェカンではこの日、デモ参加者らが市庁舎に押し入ろうとし、催涙ガスや閃光(せんこう)弾などが使われた。
AFP通信によると、NATO部隊は最初、デモ参加者らを警察から引き離そうとした。その後、盾や警棒を使って群衆を退散させた。デモ参加者の数人は、石や火炎瓶を隊員らに投げつけたという。
他の2つの自治体でも、NATO部隊が役所庁舎の周辺で警備線を張った。
欧州連合(EU)とアメリカは、コソヴォ当局が北部の状況を不安定にしていると批判。民族間の緊張を高める行動をとらないよう警告している。
コソヴォの独立は、アメリカやEU主要国などが承認している。しかし、ロシアの支援を受けるセルビアや、コソヴォ内のセルビア系住民の大半は認めていない。
コソヴォ全体では人口の90%以上をアルバニア系住民が占める。ただ、北部ではセルビア系住民が多数派となっている。
セルビアが軍を国境付近に移動
NATOによると、29日の衝突ではイタリアとハンガリーからの平和維持部隊員が負傷し、3人が重体となっている。この暴力行為に関連して5人が逮捕された。
NATOは「まったく受け入れられない」との声明を発表。すべての当事者に「緊張をあおる行動を控え、対話する」よう呼びかけたとした。
セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、セルビア系住民50人以上が病院で治療を受け、さらに多くの人がけがを負ったと述べた。
同大統領は、セルビア軍に最高レベルの警戒態勢を指示した。今回と似たような衝突があった後の26日には、部隊をコソヴォ国境付近に移動させている。
https://www.bbc.com/japanese/65750886