「ウクライナが勝利する可能性はない」西側が考え始める時期 元イスラエル秘密組織長官が見解
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東西冷戦期、米ソ間の大きな懸案となっていたのがソ連からのユダヤ人出国問題だった。
ユダヤ人には、学者、技師、作家などが多かったので、ソ連政府はユダヤ人のイスラエルに向けての出国をほとんど認めなかった。そこでイスラエルは「ナティーブ」(ヘブライ語で“道”の意味)という秘密組織を作って、ソ連から秘密裏にユダヤ人が出国することを支援するとともに、欧米でユダヤ人出国問題を政治問題化するように画策した。
ソ連で、「ナティーブ」と連携してユダヤ人の出国問題に取り組んだのが、アンドレイ・サハロフ博士、ナタン・シャランスキー氏(後にイスラエルの政治家)とヨッシャ(ヤコブ)・ケドミー氏らだった。ケドミー氏は、KGB(ソ連国家保安委員会)に何度も逮捕された後、1969年にイスラエルに向けた出国が認められた。イスラエルでケドミー氏は「ナティーブ」に勤務し、92~99年には長官を務めた。外交官時代、筆者もケドミー氏と親しくし、ロシアに関する貴重な情報を得た。ケドミー氏は、2014年のマイダン革命以降、ウクライナにネオナチ勢力が台頭していると警鐘を鳴らし、ウクライナ東部でのロシア系住民へのウクライナ政府の弾圧政策を批判した。ロシアのウクライナ侵攻についてもやむを得ないという立場をとっている。
国営「ロシア・テレビ」の政治討論番組「ウラジーミル・ソロビヨフとの夕べ」は、ロシア世論に無視できない影響を与えている。2日未明のこの放送でケドミー氏がウクライナ戦争の見通しについて、こう述べた。
<NATOはロシアとの戦闘を死ぬほど恐れている。同時にNATOは自分たちが負けるとは思っていない。西側がNATOにウクライナを加えることはない。それがロシアとの戦争行動につながると理解しているからだ。
2つの命題「西側はウクライナで勝利しなくてはならない」「ロシアはウクライナで勝利しなくてはならない」を比較してみよう。どのような違いがあるだろうか? ロシアは勝利する可能性があるが、ウクライナが勝利する可能性はない。このことを西側は信じようとしない。西側は一度も勝利しないということを考えたことがない。いつそれについて考え始めるであろうか。ベトナム戦争の例に則して考えてみよう。毎週、額を机に叩きつけられて、頭蓋が床に叩きつけられ、骨が折れる音が聞こえるようになったときである」>
ウクライナの反転攻勢を徹底的に撃退しない限り、停戦の基盤はできないとケドミー氏は考えているようだ。