申請まで4時間 パスポート窓口にできる長蛇の列に並んだら
申請するまで4時間待ち――。新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行した5月からパスポートの申請窓口に、取得、更新を求める人たちが押し寄せている。海外出張のために急きょ必要になった記者がパスポートの申請書を窓口に提出するまでの「4時間」を報告する。
海外出張が決まり、パスポートを久しぶりにめくってみると、コロナ禍の間に有効期限は切れていた。5月30日火曜日、申請書や必要書類を携えて東京都千代田区にある有楽町パスポートセンターに向かった。
申請するには、窓口が開いている平日午前9時~午後7時(木・金曜日は午後5時)に時間を融通しなければならない。昼前に着いたが、既に100人以上が列をつくっていた。申請書を提出するための「整理券」を求める列で、複合ビルの2階に入るセンターから階段を下って1階まで延びていた。
「何分かかりますか」「『分』とかじゃなくて『何時間』っていうレベルですよ」。最後尾に並ぼうとしていた男性と案内係の職員のやり取りが聞こえて、きびすを返した。
翌31日午後2時。仕事の都合を付けて、再びセンターにやってきた。整理券の列は約80人と前日よりは少ない。「これでも空いているほうですよ」。センターの隣にある写真店の店員が、混雑ぶりに驚く客にそう教えていた。申請書を手に意を決して列に並んだ。
立ちっぱなしで少しずつ前に進み、整理券を入手できたのは約50分後。しかし、まだ道半ばだ。整理券に書かれた番号が呼ばれないと、申請書を提出できない。
券に表示されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、待機人数と待ち時間が分かるウェブサイトにアクセスできる。
「待ち人数 210人」「待ち時間 約90~150分」。画面を見るなり、近くのカフェに飛び込んだ。
午後3時40分、私が並び始めた時から最後尾の位置が変わっていない整理券の列の横を通り過ぎて、待合スペースに向かった。
「499番の方は窓口へ」。午後5時50分、ようやく呼ばれた私の番号。これで必要書類に不備があったら……と一瞬不安がよぎったが、戸籍謄本、証明写真、本人確認用の運転免許証を申請書とともに窓口の職員に提出した。チェックは数分で終わり、受理。待っていた時間に比べると、あっけなかった。
時計の針は午後5時55分。並び始めてから約4時間たっていた。これで、約1週間後にはセンターでパスポートを受け取れる。
センターを運営する東京都によると、5月から申請件数が急増しており、5月は4月に比べて約25%増の約6万9000件で、コロナ前の19年5月(約6万8000件)を上回る。
他の大都市でも状況は変わらないようだ。大阪府も5月は4月より約20%増の約1万5000件で2時間以上待つこともあるという。福岡県も4月から30%超増の1万4000件以上で2時間以上かかることも。愛知県も4月より増えているといい、長いと1時間半待ちもあるという。
東京都では、コロナ前はいくら混雑している時でも1時間以内に申請できたという。都旅券課の原田一紀課長は、夏休みに海外旅行を計画している人や、コロナ禍の間に有効期限が切れた人たちがセンターを多く訪れているとみる。
他の都市の担当者も「コロナによる行動制限がなくなり今まで申請しなかった人が増えているとみられる」(大阪府)、「コロナが5類に引き下げられ、海外に行こうという気分に変わったからでは」(福岡県)、「5類移行と夏休み前で増えているとみられる」(愛知県)との見方だ。
都内在住の大学4年の女性(21)は「コロナもあって最後に海外に行ったのは19年の高校時代の台湾への修学旅行。就職活動が落ち着いたので今すぐ海外旅行の予定はないけれど、行きたいと思ったときに行けるようにパスポートを用意しようと思った」と話した。
この女性は約1時間で申請できたという。私の4分の1の時間でどうやって……。聞けば、金曜日の午前9時の受け付け開始直後に新宿にあるパスポートセンターに並んだという。
原田課長によると、窓口が混雑するのは月曜日と仕事帰りの人が立ち寄りやすい月~水曜日の午後5時以降で、都内4カ所のセンターのうち有楽町は最も申請者が多いという。原田課長は「二重発給にならないかや申請書類に不備がないかをチェックするのにどうしても時間がかかってしまう。ウェブサイトで各センターの混雑状況がリアルタイムで分かるので、確認した上で混雑緩和に協力してほしい」と呼びかけている。
東京都の混雑状況はウェブサイトから知ることができる。
https://mainichi.jp/articles/20230606/k00/00m/040/199000c