東京の朝のラッシュでのことだった。満員電車はがたんごとんと、しきりに揺れていた。

たか子さん(仮名)は当時15歳。登校中だった。電車が揺れて、手すりにつかまろうとした。

いきなり、自分の尻に手が押し付けられるのを感じた。誰かがつい、ぶつかってしまったのかと思った。

しかしその手が、たか子さんの体をまさぐり始めた。

「そこでやっと、これが痴漢なんだって気づきました」。たか子さんはそう言う。

その手はたちまち、人ごみの中にまぎれて消えてしまった。

「もう泣き寝入りして、泣きながら学校までの道のりを歩いて向かって行きました」

公共交通機関の車内でたか子さんが性的に暴行されたのは、この時が初めてだった。しかしその後、毎日の通学の中で、たか子さんは同じような目に何度も遭った。何度も何度も、数えきれないほど、泣きながら眠りについた。

「生きる希望がないように思っていた」

多くの女性が、たか子さんと同じような経験をしている。性的な目的でターゲットを探しまわっては攻撃する、いわゆる「性的捕食者」が、公共の場で女性を暴行している。そればかりか、女性たちは別の形で暴行されることもある。痴漢行為を撮影する者もいれば、撮影した動画をオンラインで販売する者たちさえいるのだ。

動画のほとんどは、似たような内容だ。男性が女性を背後から盗撮し、後をつけて一緒に電車に乗り込む。その数秒後、男性は女性を性的に暴行する。男性たちの行動は巧みで、被害者は全く気づいていないように見える。そしてこうした行為を生々しく映した動画が、ウエブサイトに商品として並べられる。

私たちはこの問題を1年かけて取材した。大量の性的暴行動画を製作し、販売するウェブサイトを3つ見つけた。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-65817476