日本人の平均年収は1990年代からおよそ30年間、400万円代で推移しており、直近の平均年収である443万円は、1992年の455万円すら下回っています(国税庁統計による)。では、日本がこうした悲惨な現状に陥っている背景にはなにがあったのでしょうか。『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が解説します。

■就職氷河期が生み出した「絶望する若者たち」

就職氷河期は、いつから始まったのか。1980年代に8割あった大卒就職率が落ち込んだのは、1991年のバブル崩壊後。そこからみるみるうちに就職率は下がっていった。

大卒就職率が初めて6割を下回った2000年に、筆者は大学を卒業した。大卒でも2人に1人しか就職できないという世界が、筆者にも待っていた。

2003年に大卒就職率は過去最低を更新し、55・1%になった。同年4月には日経平均株価は7,607円まで下落した。多くの企業にとっても未来が見えず、雇用環境は激変した。

1991年のバブル崩壊、1997年の金融不安、2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック。そして2020年からのコロナショック。

当然ながら私たちの雇用や生活は、常にその時の経済状況に翻弄されてしまう。経済記者として社会人のスタートを切った筆者には、大きな疑問が生じた。

当時、「失われた10年」から企業利益がV字回復すると、株式市場がITバブルに沸いていた。そのITバブルがはじけた直後、決算説明会で企業がこぞって「当社は非正社員を増やすことで正社員比率を下げ、利益を出していく」と説明したことに違和感を覚えた。

若者の多くが休みなく働き、疲弊していた。正社員になれhttps://news.yahoo.co.jp/articles/2b45785fea17ab68de09cc7a9f0ea7c3d6cf0923