ウクライナ南部ヘルソン州で6日に発生したカホフカ水力発電所の巨大ダム決壊をめぐっては、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナと、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアが、相手の破壊工作だと非難し合っている。こうしたなか、ロシアが別のダムを狙っているという衝撃情報が報じられた。ICC(国際刑事裁判所)による捜査打診の動きや、国際調査委員会設置を提案する動きも出ている。

【写真】ダムが決壊し、水浸しとなったウクライナ南部のヘルソン市街地

「(ロシア側は)ドニプロ川のダムをもっと爆破するよう指示している」

ウクライナ国防相顧問のユーリ・サク氏は、英BBCラジオ4の番組で、傍受した電話の内容をこう明かした。決壊したダム以外も、標的になっている可能性があるようだ。

ダムが決壊した原因はいまだに判然としていないが、西側諸国ではロシアの責任を追及する声が高まっている。

6日に開かれた国連安全保障理事会の会合では、日本や欧米が、ロシアのウクライナ侵攻がダム決壊につながったと批判し、ロシア軍の撤退を改めて要求した。英国のカリウキ国連次席大使はロシアが民間施設への攻撃を繰り返してきたと前置きし「ダム決壊の責任が証明されれば、品位の低さを新たに示すことになる」と強く非難した。

これに対し、ロシア大統領府によると、プーチン氏は、ウクライナが西側の支援を受け、ロシア領内で破壊工作を行っていると強調。ダム破壊は「野蛮な行為の明白な例だ」と非難したという。

決壊原因の調査をめぐり、国際社会の関与を求める動きも出ている。

ロイター通信によると、ゼレンスキー氏は定例のビデオ演説で、同国の検察当局がダム破壊の捜査に国際司法を関与させるようICCの検察官に打診していると明らかにした。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は7日、ゼレンスキー氏、プーチン氏とそれぞれ電話会談し、ダム決壊に関する国際調査委員会の設置を提案した。

一方、ダム決壊に伴う被害は甚大なものになるとの見方が出ている。

ウクライナの検察庁幹部は6日、ダム下流域の約80カ所の都市や集落が洪水被害に遭う恐れがあり、4万人超の避難が必要とする推計を明らかにした。州都ヘルソンでは残された人がいるもようだが、被害の全容は不明。米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は6日、「死者が多数に上る可能性がある」と述べた。

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