フランスの「本物の米国離れ」に中国は大歓喜、アメリカは大激怒している…!

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領が北大西洋条約機構(NATO)の東京事務所設置計画に反対している。「中国を刺激したくない」という理由からだ。彼は4月にも中国に配慮した発言をして、物議を醸した。今回は「マクロンの裏切り」第2弾である。

 マクロン氏の反対姿勢は6月6日、英フィナンシャル・タイムズが報じて、明らかになった。それによれば、同氏は先週開かれた、ある会合で「NATOの活動範囲を拡大すれば、我々は大きな過ちを犯すことになる」と語った。

 NATOは大西洋の両側、すなわち米国、カナダと欧州の30カ国の安全保障を約束した同盟だ。「加盟国が攻撃されれば、すべての加盟国が共同して反撃する」と約束している。同盟の適用範囲はその名の通り、北大西洋の同盟国に限られている。

 故・安倍晋三元首相が2007年にブリュッセルのNATO本部を訪れて以来、NATOは高まる一方の中国の脅威を念頭に、東京事務所の設置を検討してきた。日本をはじめとするアジア諸国との協力関係を深める狙いだ。日本は18年にNATO本部に連絡事務所を開設した。

 岸田文雄首相は昨年、日本の首相として初めてNATO首脳会議に参加した。7月にリトアニアで開かれる首脳会議にも出席する予定だ。

 マクロン氏は東京事務所の設置が「アジアへのNATO拡大につながる」とみて、反対している。フランスの高官は「NATOの範囲は北大西洋に限定されている。ウクライナ戦争で、中国に対してロシアへ武器を供与しないよう頼んでいるとき(東京事務所の設置計画は)欧州の信頼性を傷つける」と同紙にコメントした。

 NATOの意思決定は全会一致が原則なので、フランスが反対すれば、東京事務所設置計画が暗礁に乗り上げてしまうのは必至だ。
大喜びする中国

 マクロン氏の反対姿勢が報じられると、中国は大喜びした。

 中国共産党系の「環球時報」の英語版、グローバル・タイムズは6日付の解説記事で、さっそく問題を取り上げ「マクロンのNATO東京事務所計画に対する懸念は、同盟がアジアに広がるのを懸念する他のメンバー国の声を代弁している」と報じた。

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〈米国がなぜ、NATOのアジア太平洋地域への拡大を望んでいるか、容易に理解できる。すでに西側では、ロシアを封じ込めるために欧州各国と同盟を結んでいる。東側で中国を出し抜くために、確固とした多国間の軍事同盟を求めているのだ。NATOのアジア展開は明らかに、米国の覇権のためだ〉
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〈だが、他のメンバー国はどうなのか。欧州の多くの国はフランスの立場に共感している。だが、彼らは表立って、米国に逆らう発言をする勇気がない。マクロンの反対論は、フランスの独立性を示す狙いもあって、米国の利己的な課題に反対する彼らの立場を代弁している〉
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 マクロン氏が中国に配慮する姿勢を見せたのは、これが初めてでもない。

 4月14日公開コラムで紹介したように、4月に訪中した際には、北京から広州に移動する飛行機の機内で、米仏メディアの共同インタビューに応じて、こう語っていた。

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〈欧州が直面している最大のリスクは、自分たちのものではない危機に巻き込まれて、戦略的自律性を発揮できなくなってしまう事態だ。困ったことに、パニックに陥って、欧州自身が「我々は単なる米国の追随者」と信じ込んでいる。台湾危機の加速が我々の利益になるのか。答えはノーだ。台湾問題で米国の課題や中国の過剰反応に合わせて、欧州が追随しなければならない、と考えてしまったら最悪だ〉
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 マクロン氏は5月31日、スロバキアの首都、ブラチスラバで開かれた安全保障に関する会議「GLOBSEC」での講演で「我々は欧州の安全を米国の有権者の手に委ねるわけにはいかない」と発言し、聴衆を驚かせた。あからさまな「米国離れ」である。

 一連の発言をみれば、マクロン氏が中国に配慮する一方、米国から距離を置こうとする姿勢は「本物」とみて間違いない。

続く
https://news.yahoo.co.jp/articles/aa80618d01bdf44748071dea5a9d36329db69770?page=2