西村経産相が宮城、福島、茨城の漁業団体と面談 原発処理水巡り

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、西村康稔経済産業相が10日、宮城、福島、茨城3県の漁業団体と面談した。西村氏が宮城、茨城県で漁業団体トップと面談するのは初めて。国は夏ごろまでの放出を目指しており、西村氏が放出の必要性や風評被害対策について説明したものの、3県の漁業関係者からは反発の声が上がった。

 3県とも冒頭以外は非公開だった。宮城県石巻市では、同県漁業協同組合の寺沢春彦組合長ら約20人と面談した。寺沢組合長は冒頭、西村氏に「放出が目前に迫った段階で(の訪問は)大変残念。もう少し早く声を聞いてほしかった」と苦言を呈した。面談後の取材には「海洋放出反対という意思は固く変わるものではない」と強調。ただ、この日は漁業者の不安を聞いてもらうために言及しなかったといい、「方針を決めた国が全責任を果たすよう申し上げた」と話した。

 福島県いわき市であった同県漁業協同組合連合会(野崎哲会長)との面談では、西村氏が「何とか廃炉を進めながら、漁業の継続と両立していけるよう取り組みたい」とあいさつした。

 これに対し、野崎会長は「福島の漁業者として第1原発の廃炉に向かっては同じ方向を向いている」としつつ、第1原発の港湾内の魚から高濃度の放射性セシウムが検出されている現状などを示して「(海洋放出に)反対という立場で臨む」と告げた。野崎会長は面談後、取材に「我々は反対の立場だ。平行線だが、今後の説明を注意深く聞いていきたい」と語った。

 水戸市内であった茨城沿海地区漁協連合会(飛田正美会長)との面談では、「アンコウをよくいただいている」と地元の名産品を引き合いに出して距離を縮めようとする西村氏に対し、飛田会長が「国の風評被害対策は我々が要望しているものとは大きくかけ離れている。(放出に)断固反対だ」と語気を強めた。

 関係者によると、漁業者側の風評被害や後継者不足への不安の声を聞いた西村氏は「真摯(しんし)に考えたい」と述べたという。西村氏は3県での面談後、報道陣の取材に「切実で厳しい意見をいただいた」「関係者の理解なしには処分は行わないということも守りたい」と繰り返す一方、夏ごろまでに放出する方針に変わりはないことを強調した。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/4e195ef9fed76618e7a787f682aca0a4c1fb4351