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世界的な慈善家で富豪のジョージ・ソロス氏(92)は、自身が運営する金融・慈善活動団体を、息子のアレックス氏(37)に譲ったことを明らかにした。「ソロス・ファンド・マネジメント」の資産は、250億ドル(約3兆4700億円)に上る。
ハンガリー出身でアメリカ国籍を持つソロス氏は、11日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、アレックス氏は「それだけの働きをした」と話した。
ソロス一族は1990年代以降、何十もの国で民主主義の構築を支援するため、その資産を投じてきた。近年では、反ユダヤ主義の陰謀論へ対策に注力していた。
一族の広報担当者はBBCの取材に対し、インタビューの内容を認めた。
ソロス氏は、米民主党に最も多額の寄付している人物の1人。今回、事業を継いだアレックス氏は、ソロス氏の5人の子供の中で2番目に若い。
アレックス氏は一族の中で唯一「ソロス・ファンド・マネジメント」の投資委員会に所属している。WSJによると、この委員会が一族と同団体の250億ドルを管理しているという。
昨年12月には、ソロス氏が設立した慈善団体「オープン・ソサエティ財団」の会長職を引き継いだほか、ソロス氏の「特別政治活動委員会(スーパーPAC)」の管理も任されていた。スーパーPACは、特定の政治家や政治活動のために、個人や企業、団体から無制限に資金を集めることが認められている。
ソロス父子の政治的立場はほとんど一緒だが、アレックス氏はWSJに対し、自分は父親よりも「政治的」で、ドナルド・トランプ前大統領が2024年大統領選に出馬していることに、対抗する運動を実施すると述べた。
「政治からお金をなくしたいのは山々だが、向こう側が(大金をつぎこんだ活動を)している以上、こちらもせざるを得ない」と、アレックス氏は言う。
オープン・ソサエティ財団については、父親の采配のもとでそうだったのと同様、言論の自由、刑事司法改正、少数者や難民の権利、リベラル派の政治家の支援などをてーえまに、活動を続ける方針という。一方で、アメリカの国内課題をこれまで以上に重視しながら、投票権や人工妊娠中絶、ジェンダー平等への取り組みなども、活動対象にするつもりだという。
ジョージ・ソロス氏はハンガリーで生まれ、1944~45年はナチス・ドイツの占領下で過ごした。一家はユダヤ人であることを隠して生き延びた。
戦後はハンガリーからロンドン、そしてニューヨークに渡り、ヘッジファンドで財産を築いた。イギリスでは、1992年にポンド下落を正しく予想し、10億ドルの利益を上げて、有名となった。
ベルリンの壁崩壊後は、旧ソ連圏の諸国で民主主義政権を樹立することに注力し、オープン・ソサエティ財団を設立。同財団は現在、年間15億ドルを投じて、各国のリベラル活動や教育団体、人権団体を支援している。
活動の中には、アメリカの司法制度における人種的偏見への取り組みなど、右翼を怒らせるようなものもある。
2018年には、オルバン・ヴィクトル首相率いるハンガリー政府がソロス氏個人と財団の活動に公然と対立したため、国際運営事務所をブダペストからベルリンに移している。
アレックス・ソロス氏は、ヒップホップとアメリカンフットボールのニューヨーク・ジェッツのファン。仏カンヌや米ニューヨーク州ハンプトンズで著名人のパーティーに参加するなど、「派手で華やかな」社交活動で知られている。一方で、アマゾンの奥地を訪ねたり、人権擁護団体「グローバル・ウィットネス」の理事を務めたりしている